多恵子が女将をしている旅館は歴史が古く、多恵子で9代目となる和風の老舗旅館だが、かつてから2階建ての建物を壊して更地にし、5階建ての高級旅館として現在に至っている。
工事期間が11ヶ月だったが、正社員には8割の給与を保証し、交流のあるホテルや旅館に頼んで研修体験をさせ、毎月定期的にレポートを退出させ、夫である社長がチェックしていた。
建物の老朽化もあったが、何より立て替えることになったのは耐震という問題で、予想以上に建設費を要したが、長年取引の実績から銀行融資が進み、免震の関する対策費の一部が行政から負担されたので決断した背景があった。
営業を再開してから予想もしなかったお客様を迎えているが、その仕掛けの一つがHPのリニューアルで、「耐震」と「免震」をキーワードに「安全」と「安心」がリラックスの原点というような提案をしたものだが、熊本県の大きな地震や大阪での地震、また北海道で発生した大きな地震などで旅行客が神経質になり、南海トラフの話題もあることが逆に追い風となったみたいで平日でも満室となっているのだから有り難く、研修から戻ったスタッフ達がスキルアップにつながり、館内が以前とは全く異なる環境となっている。
数日前の午後、全社員を集めて会議が行われた。スタッフ研修のプロを招いて講習会を開いたものだが、「ホテルや旅館でのお客様の忘れ物については慎重に」と指摘されことに若いスタッフ達がびっくりしていた。
ご夫婦らしく見えても不倫というケースもあり、「お忘れ物が」と電話連絡をしたら大変な問題に発展する危険性もあるからだが、ベテランの仲居達は部屋に案内した時点でそれらを見極めるスキルに達していたが、女将の多恵子は過去に自身が体験した出来事を披露し、身長の上に身長をと釘を刺した。
多恵子が女将になってから5年ほど経過した頃だった。間違いなくご夫婦と判断していたお客様が、チェックアウトで生産されてから売店で土産物を購入される際にご夫婦でないことが判明し、背筋がゾッとした思い出があったからだ。
ご利用くださったお客様にお礼のお手紙を差し上げていたのだが、それを機に「もしも!」ろいうことから取りやめており、今回の全体会議でその問題が討議され、「お手紙係」を設けてお客様に「差し上げてもよろしいでしょうか?」と確認してから送付することになった。
スタッフの中にかわいい絵文字が描ける女性がいるし、副支配人は誰もが認める墨書きが達筆なのでこの二人が担当することになったが、すぐに始めたら昨日に「素晴らしい手紙が届いた」とお喜びの電話があったので嬉しくなった。
絵文字野中に旅館のキャラクターを創作したものがあり、かわいいネーミングを命名したこともあり、シールを印刷して手紙に貼り付けたり、館内のあちこちに掲示している。
前述の研修の中でホテル業界の裏話があり、部屋のゴミの処理に関して一週間の保管で対策をしていることも参考になり、社内会議でそれらについても話し合われていた。
お客様が持ち込まれたペットボトルを室内の冷蔵庫に忘れるケースが多く、新品ならそのままお預かりするようにしているが、キャップが一度開けられている場合の対応が簡単ではなく、次の日にクレーム電話という意図的行為に泣かされた同業他社の出来事も聞いているので難しい。
最近は外国から来られているお客様も多く、ホテルと旅館の慣習の異なりもあって苦労しているが、言葉の壁は英会話堪能なスタッフがいるので心配ないが、イスラム教に関するお食事の問題は食材、食器、調理具なども絡むので対応が難しく、予約時にその確認をするようにしている。
外国人で特徴がある問題に夕食を外で召し上がれることが多いことと、大浴場のご利用が少ないことである。逆に夕食を楽しみに旅館を選択されるお客様もあるが、これはこれで難しい問題を秘めており、その客室係は英会話の能力が求められ、丁寧な食材の説明もしなければならないので気を遣うことになる。
社長も多恵子も英語は苦手で、半年前に購入した翻訳機能の付いたタブレットを重宝しており、数機の内の一機をフロントに置いている。
コメントはこちらから
あなたの心に浮かんだ「ひと言」が、誰かやあなた自身を幸せに導くことがあります。
このコラム「小説 女将、DMの裏話」へのコメントを投稿してください。