景子が女将をしている旅館は北陸の温泉地にあるが、加賀温泉には含まれず、ちょっと外れた辺鄙なところで頑張っていた。
加賀温泉の女将達が「レディーガガ」に引っ掛けて「レディーカガ」というキャッチコピーで話題になっていたが、そんな女将の中にも景子と交友している人物もいた。
その彼女から誘いがあって有志で行われる女将研修会に参加することにした。会場となったのは琵琶湖畔にある雄琴温泉で、浜大津から観光船に乗ったり、長浜の盆梅や彦根城にも立ち寄る行程が組まれていた。
地元の観光課の課長が講師となって琵琶湖の歴史を受講したが、その中で「急がば回れ」という諺が琵琶湖から生まれたもので、強風が吹く比叡颪に要注意を促し、湖西ではなく湖東を通れというものだった。
加賀温泉や景子の旅館に来られる場合、大阪方面からは「特急サンダーバード」の利用が多いが、強風の影響で運休することもあり、キャンセル料の請求出来ないケースが年に何度か起きており、その事情を再認識した思いもあった。
名古屋方面からは「特急しらさぎ」が運転され、米原経由で3時間で金沢を結んでいるが、北陸新幹線の開通で名古屋から「特急しなの」で長野へ行き、そこから北陸新幹線に乗ってみようという人達も少なくないので観光客の流れに変化が生じている。
2年ほど前だったが、宿泊された京都のご夫婦のお客様が面白いことを教えてくださったことを思い出す。北海道からやっと入手したトワイライトで京都に帰って来る途中、駅に停車中に何度か特急列車に追い抜かれることがあったというもので、鉄道に詳しい事務所のスタッフに聞くと、トワイライトは観光特急列車で優先権は低く、在来線で運転されている所謂「Ⅼ特急」の方が優先されているというものだった。
今回に利用した湖西線でもトワイライトが待機して後続の特急列車を優先させる駅がある歴史を知ったが、北陸の能登でも「花嫁のれん」という観光特急が存在しているし、北陸新幹線と能登を連絡する「特急能登かがり火号」も登場している。
北陸には「小松空港」の存在があるが、今回の研修会で講師をされた課長さんは「滋賀県には空港はないのです」と寂しそうに語られ、10年目を迎えた大赤字の神戸空港のことを紹介していた。
全国には97カ所の空港が存在し、その中で第15位にランクされる神戸空港だが、自治体が管理する空港では第1位にランクされても、発着枠が1日に30往復で、使用時間も15時間と制限されているところから伸び悩み、神戸から東京へ行く人達の85%が新幹線を利用する現実は厳しいそうだ。
景子がそんな神戸空港が採り上げられるニュース番組を観ていたら、大型観光バスが到着して大きなバッグ持った中国人達が降りて来た。国際線はない筈なのにと思っていると、その人達が利用したのは高速船で、その行先は関西国際空港だった。
神戸からバスで関西空港へ行くよりはるかに早く結ばれるので人気が高いそうだが、こんなルートがあることも今回の研修会で初めて知ることになった。
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