チェックアウトのお客様を全てお見送りした後、中広間で全スタッフの会議が行われた。
テーマは社会ニーズの変化で、最近に多い若い女性達の利用に対策をしていたが、数日前に意外な事実を伝えるニュースがあって想像もしなかったことであった。
それは、最近の旅行者で最も多いのが20代の若い男性達で、旅行会社も利用せず、交通機関の手配や宿泊施設の予約などを全て自分達で行うというものだった。
この記事に目が留まった女将の千尋は驚いたが、事務所で予約を担当している女性スタッフも読んでいたみたいで、事務所でその意外性について全スタッフに理解させる必要があるところから会議に至ったものである。
ネット社会になってHPのレイアウトも考えなければならない。訪問履歴の結果を分析するとある事実が判明した。それはプランのページを開かれた場合、金額表示もがなく、その情報を知るためには詳細と予約をいうボタンを押さなければならないのだが、入らずにUターンをされてしまうことが多いと事実である。
半年前まで「詳細・予約」という別ページを設置してあったものを、そんな事実から変更して料金だけのページを設けたら訪問者が多く、そのページを開けたお客様がアクセスのページや予約のページに進まれることになり、HPから予約されるお客様が増えることになった。
そんな変更を提案してくれたのはIT技術に長けた男性スタッフだが、旅館のHPも彼の創作で、情報を知りたいお客様の立場から制作されたもので、同業他社のHPとは趣がはっきりと異なっていた。
さて、千尋は様々な旅行情報誌に目を通している。そこで知らなかった企画もあるし、お客様が利用されているケースもあるので理解しておく必要があったからだ。
JTBの「旅物語」の昨年の3月号の最終ページにびっくりした企画があった。「ご夫婦限定・ダブル5つ星の宿・ご夫婦ミステリーツアー3日間」というものだが、「とある駅」と最寄り駅も隠され、「とある旅館と」旅館名が伏せられていたが、露天風呂の写真を見て1泊目の旅館が女将仲間として昔から交流のある旅館であることを一目見て分かり、女将に電話をしたらやはりそうだった。
「旅物語」は「厳選の国内旅行」というテーマで「旅物語プレミアム」という企画を提案しており、過去に千尋の旅館も企画の協力要請があったので受けたこともあったが、流石にJTBが力を入れるだけあって多くのお客様が来られたので驚いた思い出もある。
この企画には「JTBお客様満足度アンケート80点以上の施設をご用意」「17時30分までの到着。9時以降出発のどちらかを確約」「郷土色あふれるお食事をご用意」「出発から到着まで添乗員が同行で安心」「S電話によるご視察コールで事前にご旅行をサポート」と謳い、ワンランク上の旅行を企画提案している。
目にしたミステリーツアーでも「3日間ともこだわりの昼食をご用意」「2泊とも名湯でゆったりとおくつろぎください」「○○○牛を使用した和会席」「○○○○○を使用した和会席」などと紹介されており、旅のポイントとして次の5項目が表記されていた。
「2泊とも5つ星のお宿にご宿泊」「3日間で7回のお食事をご用意。昼食にもこだわりました」「1日目は絶景が広がる露天風呂にご入浴」「○○が日本一の足湯もご体験いただけます」「日本百名城の○○城にもご案内いたします」
料金も「いい夫婦」という語呂合わせから2人で「112200円~120200円」となっていたが、この金額の違いは出発日によって異なるものだった。
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