シドニーを出発して約5時間でカンタス航空557便がパース空港へ到着した。オーストラリアの地面は日本の北海道や九州の土の色とは異なっており、どちらかと言えば赤土のような感じがした。
荷物を受け取ってから空港内を歩き始めたが、ロビーに出てから気付いたのが外貨に換えていなかったこと。空港スタッフに聞いてみたらロビーに出るまでに両替所があった筈で、ロビーに出てしまったらないということで、もちろん戻ることは出来なかった。
さてどうするかとぶらついていたら、「中国人か?日本人か?」と英語で話し掛けられた。声の主は待合コーナーの一角にあるベンチ椅子に座っていた50代ぐらいのアジア系の男女で、日本人であると答えるとその人達が韓国から旅行に来た人達であることを知った。
そこで両替をするのを忘れてしまったと話すと笑われたが、パース市内のホテルまでタクシーを利用するのにオーストラリアドルを所持していないのでどうするかと心配になった。
杖を手にキャリーバッグを引っ張る夫がタクシー乗り場の方へ出て行った。そこで夫の始めた行動にびっくりすることになった。夫は所持していたクレジットカードをタクシー乗り場の係員に提示し、停車している数台のタクシーの運転手さんに呼び掛けて貰ったからだ。
しばらくすると「OKだ!」と呼ばれて数台目のタクシーの所まで嘉代子は急いだが、黒人系の運転手さんで、クレジットカードでも対応してくれると知ってホッとした。
空港から予約してあったダクストンホテルまで20分ほどで到着。クレジットカードの支払いレシートにサインをして玄関から入ったが、時計を確認するとまだチェックインの時間まで1時間ほどある。そこでフロントでパスポートを見せて両替を頼み、それから昼食をすることにして1階のレストランに入ったが、出されたメニューを見ても何が何だかさっぱり分からない。そこで一つだけ目に留まったのが「サーモン」という文字。それなら何とか食べられそうで注文したら、やがて運ばれて来た物を見てびっくりした。スモークサーモンやカルパッチョを想像していたら、何と大きな鮭の切り身を焼いたものだったからで、それの夫の好物のジャーマンポテトが添えられており、夫が嬉しそうな表情で知稲声で「やったあ!」と発した。嘉代子はライスかパンでも食べたいなと思っていたらパンとコーヒーもセットして入っていたので嘉代子も「やったあ!」と付き合った。
食事が終わってチェックインを済ませ、エレベーターで上がり、2日間宿泊に利用する部屋に入った。
窓からスワン川と川沿いにある公園が美しい。10数年前に結婚式に招待されてパースに来たことがあるが、その時はパースの郊外にある新婦の実家でお世話になったのでパースの市内の風景は記憶にないが、スワン川のことだけは憶えていた。
その時はシンガポール航空を利用してチャンギ国際空港内で乗り継ぎを待機を6時間も体験していたが、シンガポールからパースは直行便だったので、シドニー経由で来ると随分と遠い感じがした。
現地に在住する2人の女性と約束しているのは午後6時で、一緒に夕食をすることになっていたが、久し振りの再会となるので夫も楽しみにしていた。
2人はそれぞれ小学校に通う子供の存在があり、夫は「The T」というパズルと「けん玉」を土産に用意していた。
約束の時間の10分前にロビーに行ったら、そこにはすでに彼女達が来ており、夫もハグされて嬉しそうにしていたが、杖を手にする姿を目にした彼女達が「よくぞオーストラリアまでやって来た」と驚いていた。
食事は昼食で利用したレストランですることにしたが、またメニューを見て分からないので昼食と同じ物にする夫が気の毒だが面白かった。
彼女達はどちらも小学校の教員をしており、一人が西オーストラリア州の日本語教育会の会長であることを知り、もう一人が500キロも離れたところから車を運転して来たと聞いてびっくりした。
「500キロ! 大阪からなら横浜か下関までの距離になる」と説明してくれたが、それを聞いて嘉代子も驚きながらこの国の広さを再認識することになった。 続く
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