観光組合の会合が行われた。予定されていた議題が終わった後であるホテルの社長が質問をした。それは次のようなことだった。
「実は、今年の初めにある情報誌を読んでいて気付き、実際に確認してみたらその通りで、今後の深刻な問題として悩んでいるのです。今日ご出席の皆さんも戻られてから確認されたらご理解されるでしょうが、自分のホテルの名称でネット検索をしたらトップページは全て旅行会社か紹介ビジネスサイトばかりで、こんな事態を予測して随分前から『公式』の表記を加えたのですが何の効果もなく、ネット社会に詳しくないお客様が検索されたら、直接予約につながることは不可能な現実になっているのです。何かよい対策はないのでしょうか?」
これは、ホテルや旅館の経営者に随分前から問題になっていたが、紹介ビジネスが次々に増え、今や目立たないホテルや旅館のHPはトップページに全く出て来ない状況となっている。
紹介サイトがネット内で予約可能なシステムにしているのだからそれに気付かないお客様もある筈で、不用だった筈の紹介手数料の分がお客様の負担に影響が及ぶのも当たり前なので困っているのである。
「当館のHPはトップページに出ますよ」という意見を出したのは中堅規模のホテルの若い専務だったが、彼のホテルのHPではそのために大変な努力をしているそうで苦労話を披露してくれた。
「独自の口コミサイトを設けていましてね、悪意の書き込みがあったら困りますので常にチェック出来るシステムを組んでいますし、女将、料理長、スタッフそれぞれのブログも出来るだけ更新するようにしています」
そのブログを発信している女将というのはこの発言をした専務の奥さんで、現在は若女将という立場にあるが、いつも女将会に積極的に参加する活発な女性だった。
専務が発言を続け、観光組合の公式HPもリニューアルする必要があると提案した。それは立ち上げた当時のままでもう10年の月日が流れ、それこそ「錆びた」イメージが感じられるもので、専務が確認された結果によるとお客様が開かれることは皆無だろうと指摘していた。
何処の観光地でも様々なご当地情報を満載している時代だし、アクセス道路の交通情報などをライブカメラで公開しているケースもあるので考えるべきではと結ばれたが、この世界に長けた人達がプロジェクトチーム結成して構築することになり、予算についても組合だけではなく各社負担になってもよいということになった。
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