旅館という仕事に従事している中、同業他社がどのようなサービスを提供しているかについても敏感にありたいもので、各ホテルや各旅館は開設しているHPを訪問すればある程度把握出来るが、やはり「体感に勝ることなし」という言葉があるように、実際に客として体験してみることは重要で、年間に何度か夫とこれと目的を決めて訪れることにしていた。
女将の結菜がこれまでに行ったところで印象に残っているのは鹿児島県の指宿で、一度は体験したいと砂蒸し風呂が目的だった。
もう10年以上前の話だが、一泊目は「ホテルいわさき」で夕食前に体験。専用の厚目の記事で浴衣に着替えて砂を掛けて貰ったが、10分もすると飛び出したくなるような暑さで、15分我慢して脱出したら、その浴衣のまま錦江湾の見える広い露天風呂に入った。
そこは混浴となっており、浴衣のままだったので抵抗感はなかったが、湯船の足元が砂でザラザラしていたことが印象に残っている。
その湯を出るとシャワールームですっきりしてから普通に浴衣を着用して部屋に戻るのだが、しばらくほかほかと温まった感じが続いていた。
2泊目は「白水館」だったが、ここは専用の砂場で砂を掛けて貰って温まった後は、男女それぞれの大浴場に入るようになっていたが、夫が入った大浴場が「元禄湯」と呼ばれており、それは立派な設備で随分と驚いていた。
この白水館で体験したことで学んだことがある。それは棟が分かれていて浴衣が異なっていることからどの棟のお客さんか分かるものだが、高額な宿泊料でない一般棟を利用されているお客様には差別の圧力を感じる気とも考えられ、高額料金を支払って特別棟を利用している人達は優越感を得るかもしれず、帰路に二人で随分と討議したことを憶えている。
この旅行は2004年の晩秋だったと記憶しているが、九州新幹線が新八代と鹿児島中央駅間で開通して間もなくで、新八代まで博多駅から「リレーつばめ」を利用していた。
新八代と博多間が開通して博多駅から鹿児島中央駅まで九州新幹線が全通したのは東日本大震災の次の日で、我ら日本人にとって忘れられない出来事となっている。
この全通によって山陽新幹線から直接乗り入れる「みずほ」や「さくら」も運転され、新大阪と鹿児島中央駅間を最速で2時間58分、博多駅と鹿児島中央駅間を最速で1時間17分で結んでいるのだから便利になったものである。
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