旅館のロビーには数種類の新聞を置いている。ホテルではチェックイン時に新聞を指定しておいたら部屋のドアの下から入れてくれていたり、ドアノブにぶら下げた袋の中に入っているサービスを提供しているところあるが、それはビジネスマンには新聞が必需品として考えられているからだが、観光地の温泉旅館は朝方にロビーへ出て来られるお客様用に設置してあるというべきである。
ホテルは浴衣姿で廊下に出ることもマナー違反だが、温泉旅館はそんな制限は設けているところは少なく、廊下も大浴場もエレベーターの中も浴衣とスリッパ姿で移動するのもリラックスの一つで、豊子が女将をしている旅館では、朝方に新聞を読まれる方々にモーニングコーヒーを提供するサービスが好評だった。
新聞の存在とモーニングコーヒーのサービスについては部屋の中の目立つところに案内掲示されており、誰の目にも留まるので喜ばれているが、やはり男性がやって来られるパーセンテージが高い。
全国紙と地方紙の他に、月に1回だけ発刊されている業界紙を購読しているが、高額だが豊子の情報入手のツールともなっており、世の中には様々なサービスを打ち出しているホテルや旅館があるものだと思うことも少なくなかった。
印象に残っているものに富士山の眺望が素晴らしいホテルが「富士山が見えない天候の時は割引をします」と打ち出していたことや、上州の空っ風の強風で知られる地のホテルが風速の強さに合わせて割引を打ち出しているのも面白いと感じた。
そんなことは考えられない。信じられないという発想を打ち出している旅館があった。「宿泊料金は定めておりません。チェックアウト時にお客様は感じられ価格をお支払いいただければ結構です」というものだが、ややこしいお客様が来られて「サービスが悪かったから1000円だけ」というケースはないのだろうかと気になって仕方がなかった。
これについてはこのサービス発想をご存じだったお客様とお部屋で話題になったこともあったが、絶対に利用したくないと断言されていたが「そうだろうな」と同感を覚えた。
話題になることを目的に奇抜なアイデアを打ち出すこともありだろうが、物事には常識の範囲内という限界がある筈で、それを超えてしまうと嘲笑の対象になってしまうだろう。
あるお客様のお部屋にご挨拶に参上した時、テレビでお笑い番組をやっており、お客様が「最近のお笑いの芸人は寂しいな。笑わせる能力がなくて笑われることばかりだ」と嘆いておられたことが印象に残っているが、奇抜なアイデアも同じような域ではないかと思う豊子だった。
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