辺鄙な山間部にある温泉地で和風旅館を営んでいる女将の理恵子だが、先代女将の時代から勤務している支配人の頑固さには何度も泣かされている。
今日も来年の夏に開催される県内でのインターハイに関して、組織運営委員会の役員だけが当館を利用したいという県の観光化の電話に、「幾らか宿泊料金を割引してくれないか>」という要望があったみたいで、「当館では対応、出来ませんので他のホテルか旅館へどうぞ」とお断りをしてしまったらしく、観光課の部長から改めて「何とかならないか?」と理恵子を指名した電話があった。
支配人の考え方は先代社長の哲学であった「高いものにはそれだけの理由がある。それが当館の誇りだ」という言葉を継承して対応してしまったようだが、県の観光課からの要望をそんなかたちで進めてしまうことは今後のことを考慮すれば問題も多く、改めて理恵子が参上して打ち合わせをすることになった。
最近に開催されているインターハイは、競技種目によって開催地が異なる形式で取り組まれているようで、そんな事情から宿泊施設に余裕がなくなるということもないが、組織委員会の役員達が利用する宿泊施設はそこそこのホテルか旅館を準備する必要があり、温泉のある旅館の方がという事情があることを知った。
競技会場は市街地で、選手や引率者は市内のホテルを予約しているようだが、本部役員や組織委員会の要望に関しては県の観光課が対応するらしく、高級旅館として知られる理恵子の旅館が候補として選ばれる対象になっていた。
数日後に県の観光課を訪れた理恵子はまずは平身低頭して謝罪の言葉から対応したが、観光課の部長何度か理恵子の旅館を利用したこともあり、先代社長の哲学や支配人の頑固さのことを昔からよく知っており、担当係長が初めて電話をしたみたいでかなり衝撃を受けたそうで、「部長、断られました」と血相を変えて部長室に飛び込んで来たという出来事も教えられた。
お詫びの心情も組み入れて宿泊料金の2割引き対応ということで決着となったが、理恵子は請求書と支払いに関しては部長が直接対応して貰うこととなった。
実際に宿泊ル利用された人達が、「この金額で」と勝手に独り歩きされてしまうことは理恵子の旅館にとって最悪の問題で、それだけはどうしても避けたいというのが理恵子の思いであった。
旅館から県庁への送迎を担当してくれたのは支配人で、帰路に部長との会話を話して頑固な支配人を苦労して納得させた理恵子だった。
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