夏のシーズンは砂浜に人気があるので関西、岡山、広島方面の家族連れのお客様が多いが、秋を迎えるとご夫婦のお客様が多く、その大半の方々の目的がこのシーズン限定のカニ料理で、ご予約時の電話でカニを中心とする料理プランを指定されるケースが多い。
そんなところから夏場の夕食はレストランでのバイキング形式になっているが、秋の季節は部屋食が中心となっており、リーズナブルなプランを選択されたお客様はバイキング形式となっている。
バイキングコースでも屋台が設置されて「焼きガニのコーナーもあるので喜ばれており、ご満足度も高いようでうまく回転しているようだが、朝食については全てのお客様がレストランで召し上がっていたくことになっており、「和朝食」と「洋朝食」の両方が自由で、どちらでも自由にバイキング料理を楽しめるようになっているので喜ばれている。
朝食時には2人の専用スタッフがテーブルの間を回って、コーヒー、紅茶、牛乳、お茶、ジュースなどをサービス提供しているのも喜ばれ、女将の露子はそんなスタッフ達に「さりげなく行動して、お客様に視線を感じさせない行動を考えなさい」と指導している。
旅館組合の旅行で都心の一流ホテルのバーのテーブルを利用した際のこと。水割りを飲んでいた人のグラスの中が少なくなると「もういっぱいお持ちしましょうか?」とスタッフがやって来る。同行していた人達が「ずっと見張られている感じがする」と悪評だった。
一流ホテルが「押し売りみたいな行動をするべきでない」という意見もあった。「注文したいな」と思った時に存在しているスタッフこそが一流だと指摘していた人の意見に興味を抱き、それから露子も自分の旅館のスタッフ達にそんなテクニックを研修するようになっていた。
露子が夫と東京の超一流ホテルの地下にある和食の料理店を利用した時のことだった、昼食時で「天ぷら定食」を注文したのだが、互いの食べるスピードが異なるのに合わせ、揚げ立ての天ぷらが出される配慮に感心したし、和服姿の女性の視線を一切感じないのに、お茶がもう少しでなくなるタイミングに合わせて持って来てくれる不思議なサービスに、間違いなく超一流店だと思ったが、2人でサービス料と税金をプラスして支払った金額は3万円で少しお釣りがあったくらいで、価格も超一流らしい高額な設定となっていた。
帰路の列車の中で、「駅前の食堂で天ぷら定食を食べたら二人で1600円なのに、3万円近いとはびっくりだったが、貴重な体験をしたように思っている」と夫が笑っていた表情を思い浮かべる。
国際線の飛行機のファーストクラスのCAさんの話を聞いたことがあるが、お客様が何を求めておられるか、何を欲しておられるかを察知するサービスが求められると言われていた。
要望されてから持参するのは当たり前のサービス。お客様が言葉を発せられる前に目で訴えておられることを察知できるようになれば一人前とも言っていたが、サービスの世界では終着点はなくずっと究極を求める姿勢が重要である。
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