3ヵ月で3回開催されるセミナーに参加していた松恵だったが、主催者側が手配してくれるホテルではなく、自分で選択したホテルで宿泊していた。
会場となっていたのは東京駅のすぐ近くのホテルだが、松恵が予約したのは東京駅からタクシーで15分ほどに立地していた。
外資系の高級ホテルで、シングルルームのセッティングはなく、1人で利用してもツインルームが提供され、室料だけで5万円を超す負担だったが、これも学ぶ種と思って選んだところである。
さすがに部屋の中は世界的にも知られるホテルチェーンなので洗練されている。調度品も
一級品で誰の目にも上質な空間に身を置くことが出来る環境に「高額なだけ値打ちがある」と思った松恵だった。
このホテルは24時間のルームサービスが可能となっている。寝る前に何か食べようとルームサービスのメニューを開けたら、ラーメンとおにぎりがセットされたものがあり、どちらも少しずつ食べたい気持ちがあったので電話をすることにした。
ベッドの側にある電話のボタンそれぞれに案内表記がされている。ルームサービスのボタンを押すだけでつながるシステムで、自分が女将をしている旅館とは違って随分と進んでいると思っていたが、電話がつながった瞬間に心臓が早鐘状態に陥った。突然英語で返って来たからである。
「私、日本人です。日本語でお願いします」と伝えて日本語でのやりとりが始まり、注文をすることが出来たが、まだ心臓のドキドキ感は続いていた。
15分ぐらいするとインター・フォンが鳴り届けてくれたが、ラーメンとおにぎり2個で2500円となっており支払い時には3000円を請求されることになる。味はまあまあだったが、松恵の間隔からすると納得出来ないコスパだった。
次の日の朝、チェックアウトで支払いを済ませ、ルームサービスの電話を英語で返されて驚いたことを笑いながら伝えておいたが、1ヵ月後、同じ体験をすることになり腹立たしくなり、この時は前回に伝えたことが改善されていないと伝えてチェックアウトしたが、その1ヵ月に3回目となる宿泊利用したら、今度は大丈夫だろうとルームサービスに電話を入れたら、また英語で返されて衝撃を受けた。
「仏の顔も三度まで」という言葉があるが、なぜこんなことが起きるのだろうかと不思議でならなかった松恵だったが、チェックアウトで支払いを済ませた際、「仏の顔も三度まで」という言葉を勉強しなさい。このホテルはこの2か月で3回利用しましたが、二度と来ることはありませんとはっきり伝えてフロントを後にした松恵だった。
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