女将の蕗子がロビーの花を活けていると昔から交流のある近くの旅館の女将がやって来た。「これ、頂き物だけど甘い物好きのあなたなら」と持って来てくれたものだが、びっくりするほど可愛いデザインの和菓子だった。
「最近稼働率はどう?」と質問されて予約状況の現実について話題になったが、彼女が面白い話を始めた。
「あのね、ネットのお客様向けにHPで特別企画を提案したら大変なことになってね」
それは1日1組限定の「女将の感謝」という企画で、破格の目玉企画だったが、掲載してからしばらくすると電話が殺到して大変だと言うのである。
「不思議な話ねと思って予約電話の方に確認したら、何処かの掲示板で話題になって広まっていることを知ってネット社会の恐ろしさを学んだわ」
ホテルや旅館がネットで話題になって広まることは歓迎したいが、誤解されたものが広まってしまう危険性もあり、一度拡散してしまったら収束の道を模索することは不可能とも言われており、作為的、意図的な目的で同業他社が攻撃する問題も秘められており、ネット社会の裏側に恐ろしいことがあることを教えられた
1日数組限定という企画を打ち出しているホテルや旅館も増えているし、当日予約限定でびっくりするほど低額を設定しているところもある。
その日に空室があれば午後を過ぎてから時間毎に料金が下がって行くケースもあり、それを待ち構えて予約されるお客様もあるのだから驚くが、そんな情報がネット社会で勝手に情報として広まってしまったらどうしようもなく、電話が殺到して困っているという女将の話も理解することになった。
蕗子の旅館にも様々な割引企画が存在している。最近に流行している30日前予約や20日前予約、また2週間前までの予約なら割り引くと言う「早割」もあるが、随分昔から行っている割引企画を利用されるお客様が多いのは、チェックアウト時にお客様紹介割引企画で、ご利用くださったお客様が持ち帰られた「サービスカード」で、その適用なら宿泊料金が2割引きになるものだった。
ご利用されたお客様がお帰りなって友人や知人の方々に広報活動してくださることが狙いだったが、これは予想もしなかった影響力があったので意外だった。
ネット社会になってHPの製作に関してもグローバルになった。お部屋を選択されてからプランのページへ進んだり、ご希望される料理からプランへという仕掛けなどもそれぞれのところで工夫しているが、面白い事実を学んだのはネット社会に詳しい専門家の指摘で、凝り過ぎてトップページの重い場合はUターンされてしまう危険性があるし、プランのページを開けたお客様が「詳細」を知ろうとされる際、そこにプランと並んで予約の文字があると戻ってしまうパーセンテージが高く、お客様が知りたい料金をオープンで確認出来る構築が重要だそうである。
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