迷走していた台風10号が勢力を強くして日本列島に接近中だが、今年は北海道に上陸をした台風もあっておかしいと言われている。これらは地球環境の異変の影響と考えると恐ろしいが、今回の10号は過去に大被害を出した伊勢湾台風クラスと言われているので気を付けたい。
香苗が女将をしている旅館のある温泉地は大雨の危険性があるだけという予報だったが、香苗がフロントで宿泊者名簿を整理していたら、「女将さん、大変です」と事務所スタッフがやって来た。
「女将さん、明日のお客様16人がキャンセルです」
それは大手旅行会社の北海道支店が募集した太平洋と日本海をフェリーで旅をするという企画で、苫小牧をを出港予定の太平洋フェリーが欠航となってしまったからだった。
苫小牧から仙台を経て名古屋港を結ぶ航路だが、そこからバスで中央道を走行して途中にある香苗の旅館に宿泊する予定だったが、その次の日の金沢市内のホテル利用もキャンセルになるだろうし。敦賀港から小樽へ向かう新日本海フェリーもキャンセルとなってしまう。
こんな天候の事情で交通機関が休航となったケースではキャンセル料は請求出来ず、仕入れた食材に問題がないかと気になるが、宿泊施設の宿命みたいな負の部分である。
また日程を変更されて来られることを願っているが、太平洋と日本海のフェリーの両方の予約がうまく運ぶことが出来なければ難しいだろうし、特等船室限定の旅行企画で香苗の旅館に予約があったのは2ヵ月前で、それからずっと台風のことを心配していたが、まさかこんな大型台風がやって来るとは想定外だった。
こんな場合、旅館のHPに「台風に伴うキャンセル対応で特別料金どうぞ」という緊急提案を打ち出すホテルや旅館もあるが、高級旅館のイメージダウンにならないように香苗の旅館では提案をすることはなかった。
休日になっていた数名の仲居達に出勤して貰うようになっていたが、「キャンセルがあって」と伝えたら「急に休日となっても予定はないし」という言葉もあった。
ホテルや旅館の仕事で最も難しいのがスタッフのローテーションで、キャンセルは想像以上に混乱を来す問題なのである。
今回のツアーの企画を担当した旅行会社の部長さんからも謝罪の電話があったが、台風が相手ではどうにもならない。「日程を変更してまた予約しますから」と言われた言葉に期待しよう。
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