お子様連れのお客様の対する対応について随分と頭を悩ませている女将の敦子だが、2歳ぐらいから小学校高学年のサイズに合わせた浴衣の準備を進めた歴史があり、お子様ランチにも様々なチョイスが可能というシステムが歓迎され、ご利用くださったお客様の満足度アップにつながっている。
そんな中、お部屋にご挨拶に参上した際にお話くださった方のアドバイスは、彼女の心の扉を一気に開けてくれることになった。
その人物は子供さん達がそれぞれご結婚されて別居されたことを機に、広いお家で外国人の留学生のホームステイに活用して貰おうと改造し、まるでホテルのように部屋の仕切りを入れて鍵付きの個室ルームにリニューアル。常に10人ぐらいの学生達を受け入れていた。
ご夫婦で温かく対応するところから口コミでどんどん広がり、各国の学校からの問い合わせも増えているそうだ。
これまでに卒業した学生達が帰国してから結婚する時に招待されて出席したことも多いそうだが、それぞれに子供達が誕生したこともあり、外国旅行で再会することも晩年の楽しみとなっていた。
そんなご夫婦が女将の敦子に話してくれた外国での思い出話は大いに参考になり、数日後には各部屋に備えるようにしていた。
お話は次のようなことだった。
「女将さん、外国へ出掛けて再会をするのは楽しいけど、持参する土産でいつも悩んでね。。小学生ぐらいの子供達の存在があることを知って持参したら大喜びしてくれた物があってね、それからはアメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、ルーマニアなどを訪問した際、その二つをプレゼントに持って行くことにしたのだけど、手紙やメールで予想もしなかったほど喜ばれてね」
それは「けん玉」とパズルの「The T」だった。前者は誰もがご存じだろうが、後者は木製の分割された物を「T」の字に組み上げるというものだが、ちょっとした発想の転換をしなければならず、それが完成した時の感動は体験しなければ理解出来ず、親子で挑戦出来る意地になるようなパズルだが、「T」の他に「船」や「家」など10種類も可能となっており、その全てを完成させることは至難の世界となっている。
このパズルは進化し、「The F」も登場しているそうだし、上級者向けの物も出ているそうだが、難度が高くなるので大変だが、「T」だけでも大人でも楽しめるもので旅館の夜の挑戦には最適で、お帰りになるお客様が売店で購入されるケースも多かった。
導入する時に敦子も挑戦してみたが、いつの間にか意地になっている自身に気付き、そこでこれなら受けると決断することになった。
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