稲子が女将をしている旅館は、JR在来線特急停車駅から路線バスで30分ほど離れた山間部にあるが、今、この温泉地にとって大変な問題が持ち上がっている。
国道を右折し、沿って流れる川を渡って県道を走行して川を下ってしばらくしたところに存在するのだが、その橋に問題があることが発覚、昨日から通行止めになって約2カ月間の修復工事が行われることになったからである。
橋脚の一部が腐蝕しているということなので仕方がないが、この橋が通行止めになることは6キロ上流の橋に迂回しなければならないので最寄り駅から25分程度も遠回りになるので温泉街に及ぼす影響力は大きく、地元のバス会社のダイヤ変更に伴う台数増加も考慮する必要があり、昨日から県の庁舎内にある会議室で何度も会合が開かれており、温泉街にあるホテルや旅館も臨時のアクセスに関するHP案内に取組み中だが、まだダイヤが決定していないので出来ないでいる状態だからである。
会議には最寄り駅の駅長も出席していたが、今回の問題ではJRが何かを変更して解決出来ることもなく、地元のバス会社の台数不足を補助するためにJR側のバスを運行に組み入れる案も浮上、運輸に関する法的手続きを早急に進めることになった。
旅館組合の会合ではお客様に迷惑を及ぼすことへの対応として、各宿泊施設が遠回りに関する時間と車の燃料などのことを考え、一律の割引料金で対応することが決められたし、走行距離が延びるバス会社の料金アップに関しては行政が負担してくれることも決まった。
1カ月先までの予約客が入っているところもあるが、今日の会合ではキャンセルが出たケースも数件出ており、それは橋の工事が欠陥ではないかと注目され、テレビのニュース番組や新聞記事で採り上げられたことが影響しているようだったので、今後にキャンセルが出ることも覚悟しなければならないので、出席していた関係者が暗い表情を見せていた。
この温泉地には今回の問題でもう一つ深刻なことが議題に出ていた。工事期間が2か月とされるが、しばらくすると降雪による積雪が予想され、随分と山間部を上がることになるので積雪量も深くなるということで、旅館組合が道路情報に関するリアル情報をカメラ撮影した映像で流すことも決まった。
積雪に慣れていない都会の人達には雪道の恐ろしさをご存じなく、その安全運転に関するポスターも早急に制作することになったが、積雪の影響で道路の幅員が狭くなることも事実で、上流の端まで峠を上がる道は予想以上に大変で、各宿泊施設の送迎車の運転も危険度がアップするので安全運転を訴えることにもなったが、稲子の旅館の副支配人は。毎年積雪の時期になると、チェックアウトされるお客様に「積雪のある路面で発信される時は空回りすれば脱出不可能となります。サイドブレーキを半分ほど利用してタイヤを転がすように発進してください」とアドバイスをしている。
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