広島カープが25年振りに優勝した。昨日に宿泊利用された若い女性4人は最近に話題となっている「カープ女子」で、優勝を祝った記念旅行だった。
夕食前、部屋にご挨拶に参上した女将の結子が驚いたのは彼女達の鉢巻き姿。全員が必勝と文字の入った赤い生地だったからだ。
「女将さん、浴衣も赤い柄がないかしらと思っていたけど、そこまでは無理だと考えていつも応援の時にお揃いでしている鉢巻きを持参したのです」
そんな言葉にびっくりしたが、彼女達が同じ大学に通う女子大生で、入学してからずっと寮生活をしていると教えてくれたが、カープファンになった理由は4人共中国地方の出身で、岡山、広島、鳥取、島根が故郷だった。
お客様達で還暦祝いをされる時に用意してある「赤いちゃんちゃんこ」を出すわけにも行かず、何か赤い物を考えていた結子は、料理長に相談すると「金目鯛」の煮つけと御飯に赤飯を準備すると提案してくれた。
社長をしている夫に相談したら、「これを」と出してくれたのが道楽みたいにやっているワインの中から高級な赤ワインで、「社長からのお祝いです」と食事時に出したら大層喜ばれた。
結子が興味を覚えたのは優勝記念でなぜ当館を選択されたかということで、質問してみたら旅館のHPのトップページが赤が基調色になっていたからと知ってびっくりした。
CSも日本シリーズも応援に行く予定らしいが、チケット入手が難しいのではという話題も出ていた。
午後9時過ぎ、市街地の外れにあるショッピングモールへ走らせていた男性スタッフが戻って来た。女将が頼んだのはバスタオルかフェースタオルで赤い物はないかということだったが、カープの優勝記念に発売された赤いタオルがあったそうで、それは部屋担当の仲居が彼女達に届け、「女将からのプレゼントです」と伝えると感激されたと報告があった。
観光地のホテルや旅館で大切にされている言葉に「一期一会」があるが、何かして差し上げるという姿勢は大切で、ここにホスピタリティーの原点があるような気がしている。
結子が憧れている旅館が京都にある。歴史の中で2人の仲居さんが「黄綬褒章」を受けているし、数年前に女将も黄綬褒章の栄に輝いた「柊家旅館」だが、この旅館に「来者如帰(らいしゃにょき)」という言葉が額で掲示されている、その意味は「我が家に帰って来られたようにおくつろぎいただきたい」という思いが込められているもので、京都らしいおもてなしの考え方であるが、結子もいつかそんな旅館になればと思っていた。
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