病的なほどの偏食人生を過ごして来たが、「キャビア」と「フォアグラ」が目の前に置かれたのは37年前の機内食だった。それが何かも分からずメニューで確認したらそう書かれていたので知ることになったが、もちろん食することはなかった。
ウェルカムシャンパンを味わっていると配られたのがワインのメニューで、当時はアルコール類を飲まなかったので注文しなかったが、チーフパーサーが確認にやって来た際に分からないので「あなたに任せる」と返した。
やがて離陸して水平飛行になると食事のメニューが配られ、テーブルをセッティングしてくれナフキンを敷き、ホテルのレストランのようにナイフとフォークがいっぱい並べられ、前菜から始まる豪華な食事タイムとなった。
メインディッシュはヘレステーキだったが、焼き加減まで聞いてくれたのでびっくりしたことを憶えている。
目的地まで4箇所のトランジットを含めて36時間も搭乗する直行便だったが、その間に4回も食事があったので苦痛だったことも事実である。
すぐ近くの席にいた外国人の乗客が次々にワインを注文している。それが済むとブランデーやウイスキーを頼んでいる。そんな光景に「飲めたら幸せだろうな」と羨ましい思いも抱いていた。
そんな私も少しは飲めるようになったし、風呂上がりのコップ一杯のビールの美味しさや旅館での夕食時に出て来る食前酒も楽しみになっていたのに、昨年の2回の入院で一切厳禁となってしまった。
国際線のファーストクラスやビジネスクラスを利用して一滴も飲まないなんて勿体ない話だし、出発までのラウンジでも寂しい思いで過ごすことになる。
自分がやってしまったことから病気になり、大好物の野菜の天ぷらや串カツも厳禁になってしまったし、何より満腹になったらいけないと指導されているのだから大変だ。
ラウンジで様々な物を少しずつ食べて搭乗したらしばらくすると機内食が始まる。そんなことを考えたらラウンジでもセーブしなければならない。
最近の国際線は競争が激しいようで、次々に新しいサービスが登場しているが、そんな中の一つに出発24時間前までに機内食を選択出来るというシステムで、ネットでメニューを確認してから対応して貰うことも可能になっている。
昨日の号で書いた「着いたら同じ」という言葉に抵抗感を覚えるのはそんな対応が歓迎だからである。
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