昨日の夕方、温泉組合の事務長から電話があり、今日の午前11時から組合の事務所会議室で緊急会議が行われた。
ゲストオブザーバーとしてJR東海の幹部の方が来られていたが、議題はこの温泉街の火が消える危険性を秘めた深刻な問題があることを考えようというもので、この温泉地の最寄り駅があるローカル鉄道の存続を真剣に考えなければならないと提案された。
昨日にJR北海道から多くの赤字路線について廃線の予定や、地元行政と話し合ってバス路線への変更を予定しているような発表があったが、赤字の補填に関して地元行政が負担協力をすることも難しく、JR北海道は国鉄から民間へ移行された当時からその将来の問題が予想されており、いよいよ現実になって来たようであった。
この温泉地にやって来るには高速道路を利用する方が早いので列車の利用は少ないが、1日に特急列車の運転が午前に1本と夕方に1本で、それ以外は普通列車ばかりで、勾配やカーブの多い路線なので高速運転は不可能で、鉄度マニアの中では「日本で1番遅い特急列車」なんて呼ばれているので寂しい話だ。
豊橋から飯田を経て辰野、岡谷を結ぶ飯田線だが、大半が単線で、駅でのすれ違いもあるところから普通列車の中には駅での停車時間が10分以上ということもある。
豊橋と飯田間には「特急 ワイドビュー伊那路」が運転されているが、142キロの区間で2時間半以上を要するし、普通列車なら4時間を掛かるので不便この上ない路線であった。
普通列車で豊橋から上諏訪まで直通運転されている列車もあるが、7時間以上を要するので鈍行列車に乗車目的の鉄道マニア以外の利用はないと思われる。
この路線に鉄道マニアがやって来る理由がもう一つある。それは最近の話題に多い「秘境駅」が多いからで、皇太子殿下がご成婚された妃殿下の旧姓が「小和田さん」だったので、この路線にある「小和田駅」で結婚式を挙げたカップルも多くて話題になったが、今では懐かしい話である。
温泉地へ集客するには何かの話題性がなければ難しく、「秘境駅」が幾つか存在しているとしても限られた人にしか注目されず、路線や温泉地に利用客が画期的に増えることは考えられず、JR側や行政側も悲観的な考え方を訴えており、近い将来には地元行政の負担でバス路線に変更されることも想定しなければならず、そうなればこの温泉地の死活問題に発展するので各会員それぞれが次回までに考えて案を持ち寄って進めるということで解散となった。
交通アクセスの不便さは観光地にとって最悪の条件となる。それを超越して訪れるだけの何か魅力があれば別だが、単に「名湯」や「秘湯」だけではどうにもならず、それぞれの宿泊施設がオリジナルな発想を考えてお客様に来ていただくことを考えなければならず、女将の佳津江は悩みながら自分の旅館へ戻った。
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