10月を迎えた。月日の流れは速いものである。異なるお客様を毎日迎えている日々で、
気が付けば年末ということになるが、我が日本の国には「四季」の存在があることは自然の成す恵みとして幸せなことだろう。
朝刊を読んでいたら「お節料理」の予約の受付を始めた広告が並んでいた。知られるホテルや旅館もあるし、京都の一流の料亭もあったが、高額な物なら5人前で30万円というのだから一人前5万円なので驚くことになった。
過去にネットで受付をしていた「お節料理」ビジネスが、届いた商品のイメージの違いにクレームが殺到し、話題となったニュースを思い出すが、随分前から受け付けた料理を大晦日に宅配させるシステムも簡単ではなく、もしも高速道路の事故渋滞や雪による通行止めが発生したら大変だ。
依頼した方は新年を迎えてしまう。元旦の食卓にある筈の「お節料理」がないとなると大変で、その年の雲行きを一気に悪くイメージしてしまうだろう。
真理子が女将をしている旅館も随分前から「お節料理」を担当している。特別な関係のある方限定にしているが、料理長の調理技術が高い評判を呼び広まってしまっているので大変である。
過去に母である先代女将と北海道へ旅行したが、その際に函館の湯の川温泉の「竹馬新葉亭」の売店のコーナーで販売されている特別なアクセサリーに興味を抱き、その創作者である「清雅舎」の社長と会い、真理子の旅館でも販売するようになっているのだが、ご購入されたお客様が持ち帰られてから話題になり、8人連れでご来館くださったこともある。
創作品は水引細工で時間を掛けて制作されたイヤリングやネックレスだが、その美しさや水引なので軽いという事実は実際に手にしなければ理解出来ず、真理子がそんな行動に至ったのもご来館くださったお客様が身に着けておられた物に興味を抱き、お部屋にご挨拶に参上した際に驚嘆して函館行を決めたという経緯もあった。
清雅舎の社長が来館された際、様々な傷引き細工のことを教えていただき、正月向けの飾りなども習得したが、それらをお節料理に活用したり、年始にご利用くださるお客様のお食事にも考えたいと思う真理子だった。
旅館の玄関には毎年「門松」が飾られるが、それはこの温泉街でも最も大きくて立派な門松として評判を得ているが、それを製作するのは支配人と料理長の二人で、全ての材料を本人達が山に入って切り出して来るのだからびっくりだが、今度の新年の門松には真理子が教えて貰った水引細工の装飾も加えたいと思っている。
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