旅館でも増設した新館を高額料金に設定しているところもあるし、幾つかある棟をそれぞれ区別してスリッパや浴衣、帯の色で分かるようにしているところもあるが、大浴場や土産物を販売する売店など区別がないところから利用客が疑問に感じ、余り歓迎されていない事実がある。
大都市圏にある大規模ホテルでもエグゼクティブフロア、プレミアムフロアなどを設定し、それぞれの部屋も広くて高額料金となっているところも多い。
最上階にあるレストランの存在もあり、宿泊者以外でもエレベーターを利用出来るので防犯的な対策も重要で、ルームキーを差し込まなければ自分の部屋のフロアに止まらないシステムや、エレベーターを降りてからガラス扉の関門を設けてルームキーでしか開かないところもある。
こじんまりとした高級旅館の女将をしている初枝は、大都市圏にある旅行会社への営業へ夫と行くこともあり、そんな時は高額でも区分けされた部屋を体験することにしており、区別と差別という言葉の意味を考えさせられたこともあるが、上級側の利用客が特別なサービスを受けているという優越感に納得の料金を支払う事実を学ぶことになった。
観光組合の会議に出席したら、ある大都市圏に出来たホテルサービスが話題になった。レディースフロアというのはあちこちにあるが、このホテルではシニアフロアというものを設定、全ての部屋がバリアフリーになっており、専用レストランでの食事も様々な対応が可能となっているし、中には終の棲家としてずっと連泊生活をしている夫婦もあるそうでびっくりした。
内科医、看護師、介護師の常駐もあるし、デイサービスまで受けているというのだからこれまでには考えられなかったサービスだが、それらが高齢社会を迎えたサービス発想の一つであることは確実だった。
シニアの皆さんが利用される大浴場には手摺りも多いし、他に比べて湯船も浅く設計されており、健康運動ジムを隣室に設け、専用のインストラクターが対応しているので利用客の評価が高い。
家族連れや若いカップルのお客さんが「シニアフロア」という設定に興味を抱かれ、見学を希望されることも多く、その対応がコンシェルジュの重要業務の一つとなっており、想像もしなかったほど要望が多い。
最近はマスメディアの取材も多く、広報担当者が忙しくて大変だそうだが、記事や番組で紹介されると同時に問い合わせの電話があり、マスメディアの影響力とは本当にすごいものである。
初枝の旅館も過去に旅番組で俳優が宿泊されてその反響の大きさに驚いた出来事があったが、その俳優さんが利用された部屋を指定されることにスタッフ達がびっくりしていた。
エレベーターを利用する際、何階で降りるかをチェックされることを避けるために、シークレットシステムが採用されていることもある、
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