囲碁や将棋の「冠」の付く対戦は多いが、リーグ戦を勝ち抜いて挑戦権を得た棋士の喜びと緊張は当事者でないと理解出来ないと言われているほどで、対戦日程が決定してから風邪をひかないように体調に気を遣わなければならない。
2日間という長時間の対戦で最も大変何が微熱のある状態で、微熱が思考能力を著しく低下させるからである。
数日前、囲碁の世界で七冠を有していた井山棋士が名人戦の最終戦で敗れて六冠となってしまったが、それでも歴史的な記録で、大きな話題になっていることは当然である。
新聞社が協賛している対戦は優勝賞金も高額だが、7戦の内で4戦で決着してしまうこともあり、5戦以降の会場として予約される観光地のホテルや旅館も大変で、その対戦日を目的に予約されている一般のお客様もあるが、マスメディアが対戦が流れたらキャンセル料なしでという条件を付されることも多いので大変だが、知名度や注目度ということからするとそのメリットも想像以上で、棋院の役員や新聞社の担当者と随分前から交流を始めているケースも少なくないようだ。
10数軒のホテルと旅館がある山間部の温泉地だが、旅館組合の組合長のホテルが囲碁の七戦目の会場となっており、スケジュールが決まったすぐ後の会合でその事実を組合員に伝え、その時は協力をして欲しいと懇願されていた。
歴史ある伝統建築を誇る和風旅館の女将をしている瑠璃子だが、組合長のホテルの女将とは昔から交友があり、何度か会って互いの思う悩みの相談をしたこともあるが、その中にこの七戦目の予約問題が頭を悩ませていると言っていた。
「第七戦まで進まなければお流れだし、一般のお客様の予約を取らないようにしていて流れたら2週間や1週間前に決まることもあるので大変なのよ」とこぼしていたが、夫である組合長は随分昔からの流れもあり、一度断ったら次はないという名誉な子rとなのだから続ける」と言われているそうだが、偶には4戦目の会場にして欲しいと懇願しても、他の会場となっているホテルや旅館も同じ思いで1戦目から4戦目の会場となる場所を羨ましく思っていると訴えていた。
しかし、今回の7戦目がやって来ることになったのである。3勝3敗で第7戦目で決着を迎えるのだから注目度は高く、テレビ中継や別室での大盤解説の模様も中継されるのでテレビ局のスタッフだけでも大人数となり、予約をされていた観光客に事情を伝えて別の旅館をお世話するからというやりとりに発展するので大変なのだ。
その本番の3日前に女将から瑠璃子に電話があった。ご夫婦のお客様3組をお願い出来ないかということだったが、幸い空室があったので受けることにしたが、受け入れるお客様の心情を考えると複雑な問題も考えられ、果たしてどのように接遇をしようかと考える瑠璃子だった。
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