名古屋から「特急しなの」で長野に向かうと、優香が女将をしている旅館がある温泉地である。幸い最寄り駅に特急列車が停車するので列車利用のお客様も多く、午後3時を過ぎると1時間毎に到着する列車のお客様達をお迎えにスタッフ達が行くようになっている。
優香も50歳を過ぎてから何か更年期障害を感じるようになったみたいで、体調異変であちこちの病院や医院へ行っているが、「どこもおかしなところはありません」という結果になるので不安だが、友人から勧められた神経内科の先生の受診で「更年期障害です」と診断されて不思議と安堵が生まれ、気分転換を目的に夫と旅行をするようにしている。
夫は旅館の社長をしているが、来館されたお客様が「ここは、坂本龍馬に縁があるの?」と質問されるほど坂本龍馬に関する展示物や資料が存在している。それらは夫が旅先で購入して来たもので、若い頃から坂本龍馬に心酔しており、優香を伴って出掛けた旅行先は高知、京都、長崎、霧島、湯田温泉など坂本龍馬に関係する知られたところばかりで、先週も新幹線の新尾道駅を下車して「鞆の浦」へ出掛けて来た。
福山駅なら「のぞみ」や「さくら」が停車するので便利だが、優香は昔から猫好きで、猫の町として知られる尾道へ行ってみたかったからであった。
事務所スタッフに時刻表を調べて貰ったら、岡山駅、福山駅で「こだま」に乗り換えなければ新尾道駅には行けず、結果的に新大阪駅始発の「こだま」でゆっくりと行くことにした。
鞆の浦は「常夜灯」でも知られるが、瀬戸内海で起きた海難事故で坂本龍馬が紀州藩と交渉した場所でもあり、そのすぐ近くの甘党の店で食べたぜんざいが美味しかった。
鞆の浦の町で有名なのは「鞆・町並ひな祭り」で、町中でひな人形を見ることが出来るが、それは2月下旬から3月下旬の期間限定イベントなので今回は見られなかった。
印象に残ったのは「福禅寺」の「對潮楼」の部屋からの眺望で目にした「仙酔島」の美しさで、この地を訪れた朝鮮通信使が「日東第一形勝」と称賛したそうで、その書も残っているそうだ。
「AKB48」の秋元康氏が作詞され、岩佐美咲さんが歌っている「鞆の浦慕情」でも「仙酔島」の美しい情景が謳われている。
尾道の町で可愛い猫の置物を買った優香だが、広島風お好み焼きで昼食を済ませてから夫が乗りたいと言った「平成いろは丸」にも乗船して来た。
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