函館空港から午後1番の飛行機を予約していた。朝食の前に大浴場に行った母が「大変みたいよ」と心配顔。昨夜はリンゴの木が見える大浴場だったが、今朝は男女が入れ替わって竹林の湯だったそうだが、高い壁に囲まれた1階にある大浴場だが竹の笹が猛烈な風で揺れて恐ろしい程だったと言っていた。
就寝前に観ていたテレビの番組で天気予報があったが、北海道には台風並みの爆弾低気圧が近付いているそうで、ひょっとして欠航になるかもしれないという恐れもあった。
朝食後に清雅舎の社長と共に来られていた女性に方が運転される車で函館空港まで送っていただいたが、駐車場で車の扉を開けるのが難しい程の猛烈な強風が吹いており、横断歩道をターミナルビルに向かって歩く母が何度か倒れそうになったので心配になって寄り添って歩いた。
北海道へ来てまだ一つだけ体験したかったことでしていなかったことがあった。それは「ラーメン」を食べることで、母は「塩ラーメン」を。真理子は「醤油ラーメン」を食べようねと旅行計画を話し合っていた時に話題になって約束していた。
そんな話を清雅舎の社長に笑いながら話すと、彼女は「この構内に有名なラーメン店があります。お勧めですよ」と案内してくれ、4人で一緒に昼食タイムとなった。
店内は空席がないので5分ほど待ってから案愛されたが、出て来たラーメンは如何にも北海道のラーメンらしいもので、「美味しいね」と母が嬉しそうな表情を見せた。
ランチタイムが済んで気になるのが欠航にならないかということ。航空会社のチェックインカウンターでスタッフに確認すると「横風でないケースでは大丈夫だと思います」と返された。
それを聞いて過去に夫から教えられた話を思い出した。「飛行機の離陸では向かい風なら問題ない。着陸時の横風が大変だけど」ということだった。とすると到着便が遅れなければ大丈夫かもと考えながらキャリーバッグを託し、清雅舎の社長ともう一人の女性に「後日に来館していただくことを楽しみにしていますから」と伝えて保安検査の入り口でお別れをした。
しかし、そこから搭乗口へ行ってからが大変。搭乗便の到着が随分と奥れるみたいで、まだ現在駐機場に停止したままで函館空港に向かって離陸することもしていないという情報がアナウンスで流された。
現在の所はどれほど遅延するかは不明ということだが、ここで時間を過ごすしかない。朝食時に最悪の場合はもう一泊することも覚悟しなければならないと思っていたが、今はこの空港内で待つしかない。
ふと目に留まったのがマッサージチェアが置かれたいるコーナーで、なぜ誰もいないのだろうかと不思議に思って行ったら、300円の利用料金が必要と知った。
真理子は財布から硬貨を出し、母を呼んで座らせてシートを倒し、リモコンの図柄を見ながらプログラムを決め、コインを入れて起動させたら、「これ、気持ちいいわ」とご満悦だった。
搭乗出来たのはそれから随分経ってからのこと。結果として2時間半の遅延となったが、離陸してから水平飛行になるまでの揺れは二度と体験したくない程の状況。母が手を合わせて「ナマンダブ」とお念仏を唱えていたので周囲の乗客が変な表情で見ていた。
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