東京から帰阪するのに最終の「のぞみ」を利用したことが何度もあった。今は東京駅発21時20分、新大阪着23時45分になっているが、昔は21時18分発で23時46分着であった。
そんな最終の「のぞみ」で忘れられない思い出がある。切符を購入してから東京の人達と八重洲の地下街の和食店でワイワイやっていたのだが、何気なく店内の時計を目にして固まった。発車まで3分という現実。共にいた人達に帰阪してから会計を一括負担するから誰か立て替えてと頼んで飛び出した。
エスカレーターはもちろん走って上り、改札を通過すると階段を2段跳びで上り、停車していた「のぞみ」に乗車すると扉が閉まった。間一髪で助かったのである。
指定の席へ着席したが、心臓の鼓動は早鐘のまま。それは次の停車駅である横浜駅まで続く程だった。因みに書いておくが、当時に品川駅は存在していなかった。
昼間の新大阪発の「のぞみ」で面白い出来事があった。「携帯電話」について車内アナウンスが行われていたのに、名古屋駅から乗車して来た若い男性が通話をしながら車内へ入り、三河安城駅を過ぎてもまだ喋り続けていた。
車内の前方の乗客が振り返る状況になっているのに、大声で笑いながら喋っている。何と非常識なと思っていたら、後方におられた人物が近付いて行き、次のように言われた。
「兄ちゃん、ええ加減にせなあかんで! 極道のわしがマナーを守っているのに、堅気の兄ちゃんが守らんとはどう言うことや!」
それは怒鳴り付ける言葉そのままで、車内に緊張が走って固唾を飲んで成り行きを眺めていた。
若い男性が予想しなかった言葉に驚愕したようで、手にしていた携帯電話を落としてしまい、ただ只管「すみません」の言葉を繰り返していた。
そんな出来事に乗客達はきっと心の中で拍手をしていたと想像するが、彼はその後に車内で携帯電話を使用することはしないようになったことだろう。
大阪環状線の中には携帯電話で喋っている人も少なくない。それも優先座席に座っているのだから始末が悪い。高齢の女性が多いようだが、羞恥を忘れた人に哀れみを憶えてしまう。
駅と駅の間は最高でも2分ほどだし、もしも受信したら次の駅で降りて掛け直したらよい筈。朝夕なら3分に1本、昼間でも5分に1本の電車が運転されている。それなのに「今、電車の中。後で掛け直す」と対応している人達が多いのは何故だろう。
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