観光情報誌でこの温泉地の特集記事が採り上げられ、その影響でお客様が確実に増えたので各宿泊施設が喜んでいるが、葉子が女将をしている旅館でも予約担当そ事務所スタッフからHPのリニューアルが必要と提言があり、ゴーサインを出すと共に葉子も自分の旅館を短い言葉で表現出来るようなキャッチコピーを考えようと、ある県が企画した県内の宿泊施設の案内情報誌に目を通していた。
「高台にある自然に抱かれた宿」「風光明媚な峡谷を背に佇むおもてなし料理の宿」「アクセス良好!余裕のある快適な時間をご提供」「人生を豊かに感じるためにとっておきの場所へ」「万葉浪漫がもてなす優雅で神秘なひとときを」「美人の湯のまろやかな温泉が魅力の癒しの湯宿」「硫黄香る源泉100%かけ流しの濁り湯」「多くの文人・墨客に親しまれた開湯以来の老舗」「峡谷美を借景に大自然の響きと恵みを味わう」
「渓流・セイリュウのせせらぎ響く山あいのいっぷく宿」「湯けむりの向こうからそぉと聴こえるおかえりなさい」「古き文化と新しい風が融け合う場所」「絶景の露天風呂に浸かれば空と海と一体になれる」「海一望の露天と客室 海の幸料理を楽しむ板前創業の宿」「ホテルの利便性と旅館の温もり~」「樹齢300年の老松並木に囲まれた静かな一軒宿」「素材の味を活かした料理と東屋風の木の温もり」「花に彩られた四季の情緒と美食に酔いしれる」「美容と健康をテーマにした新しい旅館のスタイル」
「源泉かけ流しの天然温泉が自慢」「癒しのひとときをリーズナブル」「山菜と川魚が中心の料理で、四季折々味覚を存分に堪能」「至福のひとときを家族でおもてなし割烹料理の宿」
「深山料理の小さな宿」
そんなフレーズをメモしながら次回の会議で参考にするように事務所スタッフに手渡したが、「こんなの何処から?」と質問をされ、「これよ」とその情報誌も渡した。
自分の旅館の何が優れているのか? もしもそれがスタッフならどのように表現するべきか? 部屋、大浴場、貸切風呂、源泉の価値観、お食事処などの施設、料理長の経歴、旅館の歴史など様々なことが浮かんだが、社長である夫と相談をして真剣に考えようと思っていた。
テレビの旅情報番組である旅館のユニークなサービスを知った。それは客室の洗面台や浴室にセットしてあるアメニティだが、未使用分をチェックアウトの精算時に割引というかたちで返金するというもので、お帰りの際に部屋を出られた後で部屋担当の仲居が素早く確認してフロントへ連絡されるつなぎが重要で、このサービスについて夫と話し合ったら、ITに長けている夫は「スタッフ達それぞれにタブレット端末で対応する時代かなあ」と呟いていたが、何か本気で取り組むような感じがした葉子だった。
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