今日は全国の葬儀のプロ達が来阪して会合を行って来たが、東京、名古屋などで行って来たものを私の体調を考慮してくれて大阪まで来てくれるので有り難いことだと手を合わせている。
今日のコラムは、そんなメンバーの会社で実際にあった出来事を私がドラマ調に書き上げたものだが、社会には複雑な問題があるのも事実である。
ある日、事務所にいるとスタッフから来客の報告があり、私と会いたいと言う方が来られていた。アポもなく全く予定外の来社だが、和服姿の女性ということで社員達の間ではどのような目的で来社されたのかそれぞれが興味を抱いていたようだ。
雰囲気からするとクラブのママさんみたいに感じたが、和服の着こなしは見事なほどで、この人物が何か難しい問題を秘められての来社であると直感していた。
女性スタッフがお茶と和菓子を運んで来た時、その人物が和装用の上品な柄のバングの中から薄いブルーの大き目の封筒を出され、テーブルの上に置かれたが、お茶を運んで来たスタッフが興味深そうに横目でチラッと視線を送り部屋から出て行った。
「あのう、随分と迷ったのですが、どうしようもなくここへお願いに来てしまいました」
それが彼女の第一声だったが、いかにも申し訳そうな表情で、ちょっと傾き加減の姿勢がより一層そんな思いを感じさせていた。
応対していた私の推察していたことが的中したことが判明したのはそれからすぐのことで、40歳前後に見える美人の次の言葉が来社の目的であることが表面化した。
「心残りになったらいけないし、病院にお見舞いにも行けなかったし、愛人関係って寂しくてね。私のマンションに来てくださって送り出す時に背中を見ると堪らなかったわ」
それは彼女の心の中にマグマのように突き上がって来る悲しみと寂しさを顕著に物語る言葉で、体調不良から一ヶ月の入院生活でこの世を去ってしまった人物に対する虚しさを訴えているようにも感じられた。
やがて彼女は机の上に置かれた青色の封筒を手にされ、その中に高額な現金が入っていることを打ち明けられ、今回の来社の目的がその日に行われる人物のお通夜に何かお供えでもしたいという要望だった。
お供えには供花、果物、乾物、提灯など様々あるが、何方からのお供えという問題があるし、絶対に遵守しなければならないのはご当家側の了解が必要ということである。
本題から離れるが、よくご供花を地元の花屋さんに依頼され、フラワーショップの全国的なネットワークを通じて届けられることもあるが、これもマナーとしては一方通行的に送り届けられたものであり、ご当家では迷惑になっているケースもあることを知っておきたいものである。
式場の物理的事情や辞退をされていることもあるし、1対と1基という問題もある。また色合いや故人の好きだった花で統一されていることもあり、突然届いた供花に困惑されることも少なくないのである。
さて、いっさい提供者の名前の出せない立場の方がお供えをするというのは難問である。失礼なことだがどうしても解決策を見出すには立ち入ったことも伺わなければならず、故人がよく通っていたクラブのママさんだと知って質問をしてみることにした。
「クラブ名でのお供えは難しいかもしれませんが、ママさんの個人名という方法もありますが?」
「それは絶対に駄目です。ビジネス社会でクラブ名なんてご法度ですし、私の存在は随分前から奥様に発覚していた関係でしたから」
こんな事実を確認したら、お供えは絶対に無理という結論になる。「主人の葬儀に愛人は何もしなかった」と奥様に思われるかもしれないが、表面的に見えるものは不可能というのが現実で、私はフェミニスト的なある発想を思い付き、そしてそれを彼女に提案したら涙を流して「有り難う」と感謝された。
それは、故人の葬儀が行われる宗派にも問題がない「お経」である「般若心経」の写経で、スタッフを呼んで会社に置いてあった「写経セット」を彼女にプレゼント。今晩に心を込めて写経をされ、明日の朝に会社に届けていただいたらご出棺時のお別れ時にお足元に内緒に納めるというシナリオだった。
これは、ご遺族を裏切った行為であると非難されるだろうが、フェミニストという行動でもなく、送られる方の立場を考えたらそんな結論に至ったのである。
写経という結論に至るまで、約1時間のお話を伺ったが、大半はお2人の出逢いから始まった思い出話で、拝聴しながらついそんな思いになってしまったものであった。
こんな話はメンバー達だけではなく私にも山ほどあるが、長い間従事していた葬儀の仕事に「生き様」「死に様」という言葉を説かれた宗教者も多く、そんな体感をさせていただいたように思っている。
今日の写真は、何度か利用した掛川の「ヤマハリゾートつま恋」。広大な施設内を循環バスが運転されており、大浴場や様々なスポーツ設備も設置されているが、夕食と朝食のバイキング形式の食事も充実しており、親子連れから高齢者夫婦まで人気の高いところである。
今日のコラムは、そんなメンバーの会社で実際にあった出来事を私がドラマ調に書き上げたものだが、社会には複雑な問題があるのも事実である。
ある日、事務所にいるとスタッフから来客の報告があり、私と会いたいと言う方が来られていた。アポもなく全く予定外の来社だが、和服姿の女性ということで社員達の間ではどのような目的で来社されたのかそれぞれが興味を抱いていたようだ。
雰囲気からするとクラブのママさんみたいに感じたが、和服の着こなしは見事なほどで、この人物が何か難しい問題を秘められての来社であると直感していた。
女性スタッフがお茶と和菓子を運んで来た時、その人物が和装用の上品な柄のバングの中から薄いブルーの大き目の封筒を出され、テーブルの上に置かれたが、お茶を運んで来たスタッフが興味深そうに横目でチラッと視線を送り部屋から出て行った。
「あのう、随分と迷ったのですが、どうしようもなくここへお願いに来てしまいました」
それが彼女の第一声だったが、いかにも申し訳そうな表情で、ちょっと傾き加減の姿勢がより一層そんな思いを感じさせていた。
応対していた私の推察していたことが的中したことが判明したのはそれからすぐのことで、40歳前後に見える美人の次の言葉が来社の目的であることが表面化した。
「心残りになったらいけないし、病院にお見舞いにも行けなかったし、愛人関係って寂しくてね。私のマンションに来てくださって送り出す時に背中を見ると堪らなかったわ」
それは彼女の心の中にマグマのように突き上がって来る悲しみと寂しさを顕著に物語る言葉で、体調不良から一ヶ月の入院生活でこの世を去ってしまった人物に対する虚しさを訴えているようにも感じられた。
やがて彼女は机の上に置かれた青色の封筒を手にされ、その中に高額な現金が入っていることを打ち明けられ、今回の来社の目的がその日に行われる人物のお通夜に何かお供えでもしたいという要望だった。
お供えには供花、果物、乾物、提灯など様々あるが、何方からのお供えという問題があるし、絶対に遵守しなければならないのはご当家側の了解が必要ということである。
本題から離れるが、よくご供花を地元の花屋さんに依頼され、フラワーショップの全国的なネットワークを通じて届けられることもあるが、これもマナーとしては一方通行的に送り届けられたものであり、ご当家では迷惑になっているケースもあることを知っておきたいものである。
式場の物理的事情や辞退をされていることもあるし、1対と1基という問題もある。また色合いや故人の好きだった花で統一されていることもあり、突然届いた供花に困惑されることも少なくないのである。
さて、いっさい提供者の名前の出せない立場の方がお供えをするというのは難問である。失礼なことだがどうしても解決策を見出すには立ち入ったことも伺わなければならず、故人がよく通っていたクラブのママさんだと知って質問をしてみることにした。
「クラブ名でのお供えは難しいかもしれませんが、ママさんの個人名という方法もありますが?」
「それは絶対に駄目です。ビジネス社会でクラブ名なんてご法度ですし、私の存在は随分前から奥様に発覚していた関係でしたから」
こんな事実を確認したら、お供えは絶対に無理という結論になる。「主人の葬儀に愛人は何もしなかった」と奥様に思われるかもしれないが、表面的に見えるものは不可能というのが現実で、私はフェミニスト的なある発想を思い付き、そしてそれを彼女に提案したら涙を流して「有り難う」と感謝された。
それは、故人の葬儀が行われる宗派にも問題がない「お経」である「般若心経」の写経で、スタッフを呼んで会社に置いてあった「写経セット」を彼女にプレゼント。今晩に心を込めて写経をされ、明日の朝に会社に届けていただいたらご出棺時のお別れ時にお足元に内緒に納めるというシナリオだった。
これは、ご遺族を裏切った行為であると非難されるだろうが、フェミニストという行動でもなく、送られる方の立場を考えたらそんな結論に至ったのである。
写経という結論に至るまで、約1時間のお話を伺ったが、大半はお2人の出逢いから始まった思い出話で、拝聴しながらついそんな思いになってしまったものであった。
こんな話はメンバー達だけではなく私にも山ほどあるが、長い間従事していた葬儀の仕事に「生き様」「死に様」という言葉を説かれた宗教者も多く、そんな体感をさせていただいたように思っている。
今日の写真は、何度か利用した掛川の「ヤマハリゾートつま恋」。広大な施設内を循環バスが運転されており、大浴場や様々なスポーツ設備も設置されているが、夕食と朝食のバイキング形式の食事も充実しており、親子連れから高齢者夫婦まで人気の高いところである。
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