和風の温泉旅館の得意とする料理は一般的に言われる「会席料理」「懐石料理」と思われているが、最近は多くの旅館で「創作料理」と呼ばれる発想が流行しており、料理長やシェフと呼ばれる人達が自分の技術に鎬を削っている。
玲佳が女将をしている旅館にも多くの料理人達がいるが、一流ホテルでフレンチを担当していたスタッフもいるし、専門学校で洋菓子や和菓子を学んだパティシエ志向の女性スタッフもいる。
チェックインをされてお部屋にご案内した際に、部屋担当の仲居がメニューを見せて説明するシステムになっているが、そのグローバルな内容に驚かれるお客様が多く、女性には特に歓迎されている。
1泊2食で一方通行みたいに「お食事です」と夕食を出している旅館が一般的だが、オードブルなど前菜からメイン料理、デザートまで多彩に準備され、全てが選択自由というのだから驚きだが、旅慣れをしているお客様ほどびっくりされているので面白いことだ。
料理長は人を驚かせるのが大好きな性格。「美味しい物は人を幸せにする」「美味しい物は食材選びから」「美味しくてびっくりが料理人の喜び」と常々言っているが、この企画の打ち合わせを始めた時に最も喜んで積極的になって進めたのは料理長自身だった。
旅館によっては「板長」という呼称で和風料理しか対応しない頑固一徹な料理人もいるが、玲佳の旅館の料理長は常々の持論のように固定観念から自由人的な発想に目覚め、指導している弟子達ものびのびとした環境の中で育まれ、厨房という世界で好循環が生まれているような気がしており、そんな雰囲気を社長である夫も喜んでいた。
玲佳の旅館の夕食は部屋食だが、朝食会場は1階のレストランになっている。傾斜の地に建設されているところから玄関側が道路で2階なり、1階へはエスカレーター、エレベーター、階段の何れかを利用して貰うのだが、エスカレーターで片側を空けて乗るということが危険という専門家の意見もあり、スタッフを常備させてエスカレーターでの歩行移動をご遠慮願っている。
朝食は洋風と和風の選択が可能だが、バイキング形式のコーナーも自由に利用出来るシステムなので好評である。
夫のフットワークの軽さは組合でも有名で、ネットや雑誌でホテルの朝食ランキングなどが掲載されるとすぐに体験するために出掛けるのだが、その半分は料理長を伴っており、「世の中は広い」「もっと勉強をしよう」という料理長の言葉にまた喜びを感じる夫である。
数日前、この数年間全国のホテル朝食で第一位に輝いているホテルピエナ神戸に行って来たが、ジャムがヨーロッパのホテルみたいに充実していたので驚いたと言っていた。
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