プロゴルフのトーナメントの中でもメジャー中のメジャーと称されるマスターズが始まった。美しい花が咲いているコースの中継を観ると一度はラウンドしてみたくなる。そこは特別な世界で限られた人達だけの世界。松山選手が不調で予選落ちしてしまったのは残念である。
昔、ゴルフ仲間の一人がマスターズの会場である「オーガスタ・ナショナル」に何とか行けないだろうかと言われ、様々なツテを頼って夢が叶いそうになったら、「英語が出来ないから」とトーンダウンして参った出来事があった。
そんな彼が興味輝くイベントが開催された。それは大阪市の鶴見区で1990年に開催された「花博」で、その中で「オーガスタ・ナショナル」の名物ホールである12番ホールを実現。抽選に当たった人達にホールインワンに挑戦させるという企画があったからだ。
彼は、何十枚も葉書を出して応募したみたいで、それが功を奏したのか運が良かったのかは知らないが、見事に参加出来ることになり、我々友人仲間が当日に応援しに行くことになった。
ショット出来るのは1回だけ。素振りすることは可能だが、全神経を一打に込めなければならない。彼のハンディキャップからするとグリーンに乗らない可能性の方が高かったが、何か奇跡的なことをやり遂げるような雰囲気を持っており、友人達の期待も高まっていた。
そして当日、彼が打つ順番が回って来た。ティーグランドとグリーンの中間ぐらいの横で見学していたが、ティーグランドに立った彼の身体が固まっている。それは緊張なんてレベルではなく、まるで別人というような状態になっていた。
「駄目だわ。あいつあんなに上がるタイプじゃないと思っていたけど」と仲間の一人が言ったが、それは彼を応援する全員の思いも同じだった。
3回ほど素振りをしたがいつものスイングとは全く違っている。ギャラリーが多いのが緊張の原因だろうが、私は空振りだけはしないようにと願っていた。
打った。舞い上がったボールがびっくりするほど曲がっている。やがて池の中に落ちた。仲間達からため息が聞こえた。ティーグランドの上で彼が落胆した姿で立っている。恥ずかしい思いもあったのだろうが複雑な表情で水面の波紋を眺めていた。
あれから24年の月日が流れた。それぞれが齢を重ねてゴルフから離れた人もいるし、私のように大病を患って出来なくなった仲間が二人いる。彼は今でも現役で愛するゴルフに行っているが、スコアの方は当時から進化していないよう。
4月を迎え、テレビでマスターズの中継が始まると、彼は昔のことを言われるので喫茶店にも姿を見せなくなってしまう。
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