女将の美恵子は夫と共に、在来線の特急列車で約1時間の大都市圏にあるホテルに行った。
このホテルのトップと夫とは昔から交流があり、前からレストランをリニューアルしたからと招待されていた。
新館線の駅のすぐ近くにある大規模なホテルで、フロント横にはロータリークラブやライオンズクラブのエンブレムマークが掲げられ、このホテルがそれぞれのクラブの例会場となっていることを掲示していた。
レストランは最上階にある。フロント近くにいたスタッフが夫の姿を見つけて歓迎の挨拶をしてエレベーターホールまで案内してくれた、何度か話したこともあることを知った。
レストランには約束していた時間の5分前に着いたが、すでにトップが中におり、すぐに2人を案内して窓側の席に案内してくれた。
しばらくするとシェフの服装の人物がやって来て「当ホテルの総料理長でございます」と挨拶があり、トップから特別な料理を命じられていると教えてくれたが、それを聞いたトップは嬉しそうな表情で笑顔を見せていた。
歓迎のシャンパンで乾杯をしたところでトップが厳しい営業問題について話し始めた。
「ロータリーやライオンズの例会場としてバンケットルーム提供して長いのですが、最近はメンバーの皆様の人数が激減されてしまい、その組織運営そのものが存続を危ぶまれているところ出て来ているので深刻なのです」
トップの説明によるとロータリーが1クラブ。ライオンズが2クラブの例会場となっているそうだが、例会の時に提供する昼食は駅弁に毛の生えたような予算で提供しているが、年に何度か行われるイベント集会やメンバーファミリーの結婚披露宴に期待を寄せているが、最近はバンケットルームを提供しているコストパフォーマンスからすると完全な赤字の状態で、見直さなければならない現実を迎えていることを知った。
一つのライオンズクラブの歴史を教えてくれたが、30年前に120名のメンバーがおられたそうだが、現在では30名以下となり、皆さんが高齢なので大変だそうである。
今の時代に若い人達が社会奉仕に参加することも期待出来ず、クラブ活動そのものの存在意義についても考える時代となっているが、他のクラブとの合併問題も多いそうで、このホテルを例会場としている2つのライオンズクラブの統一合併の話も進んでいると知った。
用意されていた料理はフレンチのフルコースで、途中で総料理長がテーブル横で火を使って調理してくれるパフォーマンスもあり、他のテーブルのお客さん達がびっくりされていた。
レストランのイメージがリニューアルされていたことは美恵子も分かった。リニューアルされる前に何度か来たことがあるからだが、絨毯や壁の色が淡いブルーで統一されたイメージに上品な感じを抱いてその感想を伝えたら、トップが嬉しそうな表情をした。
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