随分前だが、ホテルや旅館業界で話題になったサービス提案があった。それは和歌山県の観光地の休暇村宿泊施設で実施された企画で、宿泊利用者に「ときめき」を保証するプランとなっており、好評を博したものだが、今年の10月15日~12月28日の間、石川県の千里浜でリゾートホテル休暇村が打ち出していた。
千里浜と言えば日本国内で唯一砂浜を車で走行出来る「なぎさドライブウェイ」で知られるが、利用客に10個の美しい小石を手渡し、チェックアウト時に次の4つの内で何処にときめきを感じたかを投票して貰うものである。
ときめきポイントは4つ。
1 金箔とシルクのプチ湯治 ~自家源泉掛け流し温泉~
2 銀河体感 ~2人だけの貸切天文台と宇宙科学博物館~
3 朱の献立 ~明治・大正時代の輪島漆器で食す厳選食材~
4 水色の砂浜ドライブ ~日本で唯一、車で走れる砂浜を絶景ドライブ~
ときめきを感じず、小石が残った分に対して1個に付き10%の割引をするというのだからびっくりである。
1日に1組限定の企画で平日1泊2食付きで「19500円」となっているが、土曜日と12月23日は「2000円増し」となっていた。
石川県から近い温泉地にある旅館の女将をしている敦子はこのニュース情報を読み、事務所スタッフ達と会議を開き、何か話題になるようなサービス企画を考えようということになった。
献立というテーマもあったことから料理長の参加も要請し、これまでになかった何か新しい企画をそれぞれが考えることを宿題として、今年中にもう一度会議を開くことが決まった。
副支配人が与えられた宿題は近隣の観光地を5か所以上選出することで、その一つとして観光組合が集客のために最寄り駅に設置した長い足湯で、秋を迎えてオープンしたら大好評を博しているものだった。
車で30分走れば仏教宗派で知られる本山もあるし、幾つか候補が上がって来たが、事務所スタッフから「高齢者向きばかり」と指摘されてしまい、若い人達にも注目される観光地がないかと模索する副支配人だった。
料理長は「輪島塗」の食器が出ていたことから元料理人だった亡き先代社長が蒐集していた昔の料理皿や器を取り出し、厨房のテーブルの上に並べて眺めていたが、それを初めて目にした若い厨房スタッフ達がその美しさと高度な気品に驚嘆していた。
そんなスタッフ達の行動を見ながら、「何か期待出来そう」と思った敦子だった。
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