20数件のホテルや旅館が存在している温泉地だが、女将会の活動が積極的で、昨日も女将会主催での講演会が行われ、最寄り駅まで行く途中にある文化ホールの中ホールを会場としていたが、旅館組合に加盟しているホテルや旅館から仲居やスタッフの参加が認めらてれており、克子が女将をしている旅館からも20数名が出席していた。
克子は社長である夫の身内に不幸があって夫婦で葬儀に参列していたので今回は参加出来ずに残念だったが、参加したスタッフ達全員に学ぶことになったことをレポートとして提出させることになっていたので確認するのが楽しみだった。
遠方で行われた葬儀に車で出掛けてたので大変だったが、折悪しくの雨でも荷物の心配もなく「正解だったなあ」と夫が車内で行っていた。
夜遅くに戻り、次の日は早目に出勤した克子だったが、事務所の彼女の机の上にはレポートが置かれており、すぐに開けて読み始めた。
「言葉遣いで気になっていたことがおかしいことを学んですっきりしました」
そう書いていたのは事務所の若い男性スタッフだが、「上司に対して『了解しました』は失礼ということ」「コンビニ言葉として知られる『1万円札でよろしかったでしょうか?』という不思議な過去形の言葉の疑問」「こちらがケーキセットになります」と何か変化が始まるような言葉のおかしさも書かれていた。
ホールの舞台の上で車椅子についての研修も行われたそうで、実際に架設された通路などもあって通行する際の危険性の問題を初めて知ったということもあった。
「講師の先生の指摘でそうだと学んだことがありました。それはどこでもバリアフリー当り前になっているが、部屋から車椅子の人がご自身で出られる時、ドアストッパーが絶対に不可欠だということは思い付きませんでした」
どこのホテルや旅館でも玄関に車椅子が数台置かれているのが常識となった時代だが、その扱い方を如何に優しく対応出来るかということも大切なことで、スタッフ達に改めて研修する必要があると思った克子だった。
コンビニで蒸しパンを買った時、「温めの方は?」と聞かれて「方」をどうして多用するのだろうかと常々疑問を抱いていたが、入院している時に看護師さんから「採血の方よろしいでしょうか?」と聞かれて違和感を抱いたことを思い出した。
日常の社内会話で恐ろしいのは、仲間同士で交わしている言葉でお客さんのことを言ってしまうことで、「お客さんが来たよ」と「お客様がご到着です」との違いに表れることもあるからだ。
克子が過去の研修会で学んだ言葉遣いで印象に残っていることがある。それは「で・も」という助詞の重要性で、例えば「お茶でもいいですよ」という言葉は聞こえ方によっては失礼になることもある事実だ。
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