先月中旬に予約の電話があったお客様だが、一昨日に奥様からFAⅹが入り、次のように書かれてあった。
「明後日にお世話になります。よろしくお願い申し上げます。
誠に勝手なお願いですが、夫は高血圧で様々な持病があり、医師から来春までの余命だと宣告を受けております。
そんなところから秋を迎えてからあちこちに出掛けておりますが、夫が知人から耳にした貴旅館のことを言ったのでお世話になることにいたしました。
つきましては、食事に関しまして血糖値の上昇を避ける必要があり、HPに対応が可能とございましたので是非よろしくお願い申し上げます」
これもリピーターと考えられるお客様であるが、高齢社会になって成人病の蔓延への対応も重要と、夫の友人の奥様が管理栄養士として活躍されているので指導を受け、料理長の協力の元、3年前からHPにも表記しており、それをご要望になるお客様も増えている。
先月末に仲居達を集めた会議があったが、そこで意外なことを提案する仲居があり、次の日からその対応をしたこともある。
それは多くのお客様が何らかの薬を服用されている事実で、薬用として「白湯」を別に用意することだった。
女将の加奈は届いたFAⅹの中にあった奥様のお名前に何処かで知っていたような記憶があるので気になっている。届いてからずっと気になって記憶のページを遡ってみてもつながらず、ご到着まで何とか思い出したいと願っていた。
そしてご到着の日を迎えた。午後3時頃から玄関で到着する自家用車やタクシーを迎えていたが、ご夫婦がタクシーで到着されたのは午後4時過ぎのこと。ご主人が先に降りられてタクシー料金を支払った奥様が降りて来られたが、そのお顔を目にした瞬間にその方のことを思い出すことになった。
もう6年前のことだが、ある観光情報誌の中で「こだわりの旅館」として紹介されていた中に女将の写真があり、それが本日に来館された人物だった。
この情報誌で知った加奈は半月も経たない内に夫と二人でその旅館を訪れて一泊したが、その時のオリジナルサービスを学んで検討して加奈の旅館で具現化していることもあった。
料理長が特別なメニューで対応してくれている。夕食時にご挨拶に参上した際に6年前の情報誌を読んで夫婦で出掛けたことや。参考にさせていただいた幾つかのサービスについても正直に話すつもりだが、社長である夫と二人で伺うことにしていた。
「学ぶ」「ということは「真似ぶ」という説もあり、ここでちょっと参考にしてすぐに始めたサービスを書いておこう。それは、チェックイン時からチェックアウトまで全てを一人の仲居が担当するシステムで、夫婦で行った際に担当してくれた仲居さんが特に素晴らしくて印象に残り、帰路の車中で話し合って即決したサービスであった。
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