北海道で暴風雪のニュース映像を観ながら、関東でも明日は積雪があるような予報が流れ、本格的な冬の季節の到来を迎えているようである。
通勤にスタッフ達の車を冬用タイヤに代わっているし、旅館の送迎車数台も全て冬用タイヤになっているので準備万端というところだが、営業を続けながら3か月間を要して完成した工事がこの冬にその機能を果たしてくれるだろうと期待している。
積雪の時期を迎えると、駐車場側から玄関へ上がって来る階段が凍ってしまって危険で、毎年転ばれるお客様があり、昨冬には腕を骨折された方もあってこれまでの最大の問題点となっていた。
社長である夫が友人の建設業者に相談、費用が掛かるが画期的な解決方法があると提案され、相談を受けた女将の登美子は大歓迎で有無もなく賛同してお盆を過ぎた頃から工事が始まっていた。
この工事の目的は階段に積もった雪を凍らせないというシステムで、階段そのものの地面に暖房設備を施しており、電源スイッチを入れるだけでコンクリートの地面の温度が上昇し、積雪している雪を解かすことが出来るものである。
また湧出量が豊富で多くの湯を使わずに捨ててしまっていることも勿体なく、その湯を通すパイプを新設して湯を駐車場に流せるようにして雪を解かせるシステムも完成した。
これで車で来られるお客様も楽になるだろうし、転倒されずに玄関から館内へ迎えることが出来るので安堵しているが、支配人の話によると今年は雪が多いと予想されているそうで、費用は高額だったが大きな期待を寄せるシステムの完成をスタッフ全員が喜んでおり、噂を聞いた近隣のホテルや旅館の関係者が見学に訪れているので、社長が自慢気に案内している姿が見られた。
お客様が全てチェックアウトをされた後、会議室でスタッフ会議が行われた。テーマは二つで、大雪で鉄道が運休したり道路が通行止めになった場合のチェックアウト体制の進め方とキャンセルの連絡方法と、昨日に福島方面で発生した大きな地震に関連して、この地域でそんな地震が発生した時の対応で、土砂崩れでも発生したら数日間の滞在を強いられるお客様も考えられるところから、備蓄されている水や食料の保存有効期日の確認などもチェックすることになった。
登美子の旅館では各フロアやそれぞれの施設に防火責任者を決めている。客室フロアはそれぞれの部屋担当の仲居のフロアチーフが担当しているし、厨房は料理長、事務所は事務長、フロントのあるロビーフロアは支配人と決まっており、副支配人は大浴場と脱衣場の責任者となっていた。
その日、各フロアや施設内の設置してある消火器の有効期限の確認も行われたが、消防法で定められた煙感知器やスプリンクラーなどの体制も整っているが、初期消火に消火器の存在は有効で、チェックがお会わると支配人が仲居達を伴って防火扉の正しい使用について訓練をしていた。
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