香澄が女将をしている旅館にはIT技術に長けた男性スタッフがおり、彼が構築したHPは各方面で話題を読んでいる。
それは公式HPから予約されたお客様だけの特典で、HPで予約すると専用ページを開けることが出来、そこには食事の好き嫌いに関する数十種類のチェックが書き込めるようになっており、ペアで宿泊しても互いの料理が全く異なる対応も可能となっているのである。
電話予約のお客様にも対応を考えたが、質問のチェック表を郵送したりFAⅩ送信する場合に相手側に問題が生じることも考えられ、ネットで予約されたお客様限定の対応となっているが、これが口コミで評判を呼び、偏食の多いお客様には好評を博している。
また、チェックインの早いお客様には部屋係の仲居が対応するシステムもあり、細かい対応は出来ないが、メイン料理など幾つかの選択が可能となっている。
蟹、海老、海胆、鮑など高級食材を喜ばれるお客様は多いが、それらが全く駄目というお客様もあり、旅館側が一方通行的にお出しするメニューを考えた結果にこんな対応システムに至った訳だが、どのお客様にも歓迎のお声を頂戴しているので喜んでいる。
朝食については洋朝食、和朝食、バイキングの3様式から選択可能だが、時にはご夫婦なのに、お一人はバイキング会場へ、お一人はお部屋で召し上がられるケースもある。
ホテルや旅館はお客様が求められることに対応しようと新しいサービス発想をするが、大都市にある大規模ホテルのレストランの多くが赤字となっているという裏面もある。ホテルにレストランがなければ成り立たないからオープンしているというのが本音みたいな言葉も流れているが、スタッフが少なくて済むバイキング形式は、メニューが残ってしまうことが勿体なく、このぐらいだろうと予想判断を誤って足りなくなるとクレームになるので簡単ではない。
一流と呼ばれるホテルのレストランにあっては、メニューに記載してあるものが「本日は売り切れました」という訳には行かず、常に余分に仕入れている事実もあり、それをどのように次のメニューに組み込むかということも重要で、出来るだけ無駄のないように考えている。
香澄の旅館がお客様の偏食に対応することにしてから、予想もしなかったメリットが出て来てびっくりしたことがある。それは食材に関して無駄が劇的に少なくなったことと、生ゴミが少なくなったことだった。
香澄が昔から交流している他府県の旅館の女将がいるが、そんな話をしたらすぐに体制を整えて同じシステムを導入。お客様から大歓迎されたと喜びの電話があった。
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