観光業界の雑誌を読んでいた。そこに伊勢志摩サミット後から伊勢の海女さん達への取材が増え、世界中のメディアが殺到してそうだ。
若女将の初子は過日に行った女将との伊勢への日帰り旅行で、海女さん達の小屋へ立ち寄って新鮮この上ない海産物を食べたかったと思い、次回には初子が女将を案内したいと考えていた。
戻ってから伊勢へ小学校の修学旅行で行ったという副支配人の話を聞いた。奥さんの実家が鳥羽商船学校の近くだそうで、昔の鳥羽の様子を教えて貰ってびっくりした。
現在の近鉄鳥羽駅のある場所は海を埋め立てたそうで、御木本真珠島にも橋があるが当時は船で利用していたそうである。
JRの鳥羽駅の前の山手に日和山展望台があり、観光エレベーターがあって賑わっていたが、昭和49年1月6日に発生した鳥羽駅の火災から延焼してしまったそうで、地元の人達が寂しい思いをしていることを知った。
当時は現在の近鉄鳥羽駅もなく、宇治山田駅と鳥羽駅間はバスで結ばれていたそうだが、志摩線を買収して新線でつながったことから伊勢志摩への観光客も増えたそうで、「まわりゃんせ」という近鉄線の周遊券も発売されて人気があるそうだ。
副支配人が独特の伊勢弁の実演もしてくれ、フロントスタッフや側にいた仲居達も驚いていたがが、仲居の一人が「伊勢を舞台にしたドラマで聞いたことを憶えている」と言って盛り上がった。
その言葉遣いの特徴は語尾に「なあ」をつけることで、「通してね」が「通してなあ」となるもので、何かゆったりとする趣があった。
方言とはその地で独特の響きがあるもので旅の情緒の一つである。山口県の「おいでませ」もそうだが、初子の温泉地でも旅館組合が中心となって集客につながるキャッチフレーズを考えようと取り組んでいる。
会議の冒頭で組合長が「北海道はでっかいどう」みたいなコピーが考えられたら嬉しいのですがと発言していたが、それぞれが宿題として次回の会議で発表されることになっている。
地元の特徴を短い言葉で表現することは簡単ではない。初子の旅館のスタッフ達も皆で考えることにしたが、これと言ったものが出ないので困っている。
事務所スタッフの若い男性が「美人女将が多い温泉ですというのはどうです」と発言し、初子がすぐに却下して笑いに包まれた。
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