瑤子が若女将から女将になってから4年の月日が流れた。若女将の時代には現在の社長である夫と2人であちこちに出掛け、利用したホテルや旅館で感じたサービスはいっぱいあり、女将になってからその具現化を進めている。
「これはよい」とすぐに採り入れたのは各部屋に設置しておく持ち帰りになるタオル。宿泊されるご人数に合わせて全ての方々に色違いのタオルをセットすることで、旅館名のロゴマークの部分の色が8種類もあるので8人様まで同室でも問題がない。
ご夫婦でもタオルの間違いが嫌なことと伺ったことがあるが、夫と利用した旅館が色違いのタオルを用意していたことに素晴らしいと感じ、戻ってからすぐに業者を呼んでお願いした。
お蔭でお客様には頗る高い評価をされている。中には「さりげない部分に気が利いているね」と言われて嬉しかったこともある。それが同業他社で学んだことからということになるが、女将になってからも積極的に全国各地に出掛けて体感している。
「体感に勝ることなし」という言葉があるが、業界のセミナーや女将研修会で学ぶこともあっても、自分自身が利用客という体験から学ぶことは多く、一方通行的に提供していたサービスが自己満足のレベルだったと気付いたことも少なくなかった。
夫のそんな勉強は外国に行くことも積極的になっている。何処の国へ出掛けるのにも様々な航空会社のビジネスクラスやファーストクラスを利用し、各空港のラウンジサービスの体験も目的と言っているが、何か費用の掛かる道楽のような気がする瑤子だが、プラスになることも多いので文句を言わないようにしている。
そんな行動からいつの間にかマイレージが貯まり、夫婦で無料航空券を利用して出掛けたこともあるが、やはり日本航空や全日空という自国の航空会社を利用する方が落ち着くことは確かだし、機内サービスのCAに関しても、我が日本の文化である「おもてなし」の姿勢を感じているが、その人物の有する資質に全てが凝縮されているような思いを抱き、仲居達の指導教育にも変化が生まれたきっかけとなっている。
会議の中でスタッフ達から提案されたことで想像以上に喜ばれているのが外国産のビールや地ビールの提供。チェックインをされた際にリストの入った「お飲み物情報」をテーブルに出すが、興味を抱かれて珍しい物を注文されることも多い。
最近に潮流となっている「焼酎」の種類も豊富である。「こんな物もあるの!」と驚かれることも旅館サービスの一つで、話の種にお持ち帰りいただく土産話になれば素晴らしいことにつながる訳である。
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