チェックインをされるフロントには3種類のメガネが置かれている。近眼や老眼の方々もおられ、何処でも3種類ぐらいの眼鏡を用意しているのも常識となっているが、柚葉が女将をしている旅館にはこの他に大きな天眼鏡と照明付きの天眼鏡も用意してあった。
チェックイン時にそれを目にされて憶えていたお客様が、夕食を終えられて大浴場に行かれた際にロビーへ来られ、夕刊を読みたいから照明付きの天眼鏡を貸して欲しいと頼まれた。
それは本当に優れもので、実際に使用されたお客様も「これはいいわ。帰宅したら買い求めなければ」と言われて購入先を聞かれたスタッフが、「ネットショップ」で知って購入したことを伝え、そのHPのアドレスとトップページをプリントアウトしたら大層喜ばれた。
高齢者社会の到来で便利で歓迎されるものも出ている。旅館やホテルに絶対に不可欠な時刻表だが、JTB発行の物とJR発行の物が知られているが、文字が1,5倍大きくなった交通新聞社発行の「文字の大きな時刻表」が高齢者に喜ばれている。
柚葉のフロントには2冊ずつ時刻表が用意されているが、大きな文字の分をお貸しすると皆さんが驚かれて「これは見やすいわ」とびっくりされるが、意外と知られていない事実を知ることになった。
柚葉の旅館の最寄り駅は「芦原温泉駅」だが、昭和47年の3月まで「金津(かなづ)駅」となっていた。当時に珍しいダイヤが組まれていたことからこの駅では上下線を間違ってしまうことが少なくなかった。
「特急 加越」という列車が存在した、同じ時刻に金津駅の上下線ホームに停車していたからだが、それぞれの次の停車駅から引き返して来ることが多く、そんな場合は「誤乗」対応されていたようだ。
社長である夫が東京出張の帰路に寝過ごしてしまい、在来線の特急列車に乗り換えなければならない駅を通り過ごした出来事もあったが、その時も車掌さんが「誤乗印」を押してくれて料金なしで戻られたが、それはスタッフから社長の恥ずかしい体験談となって話題になっていた。
フロントスタッフ達は、最寄り駅の時刻表を記憶しており、時刻表なしでお客様の質問に対応するので驚かれているが、次の日に行かれる観光予定に合わせた情報提供も重要で、彼らが集めて整理したオリジナル観光情報が役立っている。
山代、片山津、山中、粟津など知られる温泉地が近いが、最寄り空港は「小松空港」なのに、北陸新幹線の開通から便数が減ってしまった事実もある。
大阪や名古屋方面から在来線の特急列車を利用されると、芦原温泉駅が最も近いことになるが、金沢の方からなら遠くなるデメリットがある。北陸新幹線開通で加賀温泉に立ち寄るお客様も増えてはいるが、柚葉の旅館にはあまり恩恵が出ていない。
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