旅館としては出来るだけ空室を埋めることも重要で、遠い昔には考えもしなかった一人旅の受け入れをするケースも増えた。
佳代子が女将を務める旅館も女性の一人旅を歓迎するような企画を提案し、「自分へのご褒美」というキャッチフレーズで特別な食事の選択やエステにもグローバルに対応し、予想以上にお客様が多いので喜んでいる。
そんなお客様との会話で知ったことは、若い女性やキャリアウーマンと呼ばれる人達がネットで一人旅の情報を調べているという事実で、近々にHPのリニューアルも考えていた。
旅館という立場で泣かされるのは当日や前日のキャンセルだが、規定のキャンセル料を了承してくれたらよいが、振り込んで込んでくれないケースもあるし、最悪なのはキャンセルの連絡もなく来られないお客様である。
公共交通機関の運休によるキャンセルもあってどうしようもないが、車で来られる数組のお客様がおられるので閉館するという訳にも行かず、大浴場も準備しなければならないし、スタッフも最低限度が必要なので赤字になってもオープンしている日もあるので大変だ。
基本的に交通機関が運休し場合はキャンセル料の対象にはならないので仕方がないが、台風や大雨という自然災害に泣かされることも1年の内には何度か起きており、これは宿命というかたちで納得しながら経営に取り組んでいる。
携帯電話に写真機能が付いてから予想もしなかった問題も起きている事実がある。それは新聞記事にも多いが「盗撮」ということで、特に気を付けなければならない場所が大浴場と脱衣場で、防犯カメラを設置することも出来ないので悩みの種になっている。
先月の女将会で話題になったことに衝撃的なことがあった。ある旅館の大浴場で盗撮された写真がネットに投稿されていたことが判明し、その現場となった旅館に警察の捜査があったというものだった。
また、男性と女性の大浴場を入れ替える旅館が多いが、その前に行われるスタッフに夜よる清掃で大変な問題が発生しことも話題になっていた。
「悪気はなかったのよ。ご利用時間の勘違から女性のお客様が入浴されているところへ、男性スタッフが誰もいないと思って清掃に入ってしまって大騒ぎになったの」
「どのように解決したの?」「掲示してあった利用時間を確認いただいて、それが清掃時間だったとご理解いただいて落ち着いたのだけど、こちらもペナルティ的に負担をすることは避けられなかったの」
一般的大浴場の清掃はチェックアウトからチェックインまでの間に行われているが、この問題が起きた旅館では男女の入れ替えを行う前の1時間にも清掃することに拘り、それがお客様のご意見から数年前から実践しているサービスで、HPにも拘りとして表記していた。
マンネリの中で発生するミスは解決し難いと言われているが、確認をせずに勝手な思い込みから想像もしなかったトラブルになることもあるという教訓として学んだ佳代子だった。
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