2週間前に旅館組合の会合で決まった各施設へのコンサルタントの派遣が順に行われており、志摩子が女将をしている旅館にも今日の午後一番に来館して来た。
温泉地が一丸となって活性化しなければということで、地元の行政からの補助金も出たところから取り急ぎ各宿泊泊施設が開設しているHPを客観的に分析して貰うことになり、これまでにチェックされた旅館の中で指摘されたことをすぐに変更したケースもある事実を聞いていた。
お客様がHPでホテルや旅館の情報を調べる時、料金を知りたいとプランのページを開けたら、「詳細はこちらで」と「予約」出来るページに誘導する仕組みが多いが、「予約」という文字を目にしただけでUターンしてしまうのは心理で、この部分を提供している側が気付いていないことは勿体ない話である。
「親切か」「不親切か」というのが感じられてしまうのがアクセスを案内するページ。大都市圏からの交通機関の所要時間を案内しているのに、最も知りたい最寄駅からの部分がはっきりと分からないというのは最悪で、それは「不親切」ということでUターンの危険性が高まるのである。
コンサルタントが来館した際に一緒に対応したのは志摩子と社長である夫の他に当館のHPを制作した事務所の男性スタッフだったが、コンサルタントは来館する前に全ての宿泊施設のHPを細部までチェックしていたみたいで、応接室で出されたお茶を飲むと、すぐに志摩子の旅館に関して分析を始めた。
「この旅館のHPはこの温泉地で群を抜いて高レベルな構築されているので賛辞に値します」と冒頭に言われて喜んだのが制作担当の男性スタッフだが、特に評価されたの予約ページを独立して分けられていることで、部屋、温泉施設、館内施設、料金などを全て確認してから予約しようと思ってから安心して開けることが出来るので、完成度の高い親切感が伝わると評価を受けた。
「HPのイメージから勝手に想像されてしまうギャップは恐ろしいもので、実際に利用されてHPと違うようになればもう満足度はどうにもならないようになってしまい、ギャップが生じないような文章表記やイメージ写真の掲載を考えなければなりません」
これまでに担当された他の地区の温泉地の旅館で、立派なHPを有しながら外観の写真がなく、それは築年数が経っているところから古ぼけた状態になっており、そのイメージを写真を掲載したらそれだけでUターンをしてしまう可能性があり、館内設備の写真だけ掲載していたというものだった。
「かなり大規模な旅館でしたが、ご利用されたお客様からクレームが多く、これでは駄目だと正直にHPで事実を表記したらクレームがなくなったケースもありました」
それは、「当館は禁煙ルームがございません。ご希望があれば消臭対応を」というタバコの香りの問題で、築年数が長く、もうすぐリニューアルの予定があるので禁煙ルームを設置するが、オープン当時から禁煙という発想をして来なかったことも事実だった。
ご到着されて部屋へご案内してから「煙草の香りがきつい。部屋を変えて欲しい」という問題が多かったからだが、世の中の流れからすると禁煙の関しては神経を遣わなければならないだろう。
コメントはこちらから
あなたの心に浮かんだ「ひと言」が、誰かやあなた自身を幸せに導くことがあります。
このコラム「小説 女将の旅館のHP」へのコメントを投稿してください。