旅行会社が主催する講演会が都内のホテルで開かれ、在来線の特急列車で2時間を要する温泉地から女将の久仁子が参加した。
今回のテーマは政府が法整備の検討に入った「民泊」に関する問題で、大都会から離れた温泉地の旅館には影響が及ばないと考えていたが、外国の現状の紹介もあって法整備の結果によっては既成のホテルや旅館にも影響する問題であると知り、帰路の列車の車内で今後の対策をどのようにするべきかを考えながら、観光組合や地元の行政を交えて会合を開かなければならないと思っていた。
すでにネットの世界ではそんなビジネスが存在している。ホテル不足や宿泊料を抑えようとする観光客を対象に、登録されているマンションの空室を紹介提供するものだが、住んでいる人達の抵抗感もあり、防犯的な問題を危惧する指摘も出ている。
部屋の鍵を貰った利用者達が合い鍵を作ったらそうなるのだろう。きっと毎回変更されるシステムになっていると想像する久仁子だが、講師の話の中に民泊を目的に建設されつつマンションもあるそうで、空室の多い登録マンションには多くの外国人が利用している事実があり、狭い部屋に十数人が入っていたケースもあって近所の人達が困惑している現実も紹介されていた。
数日前、無許可「民泊」の容疑で旅行会社役員、旅行代行業役員、マンション管理会社社員の3人が送検されていたニュースがあったが、外国人の訪日が驚く程増えている状況に何かシステムが変更される可能性も出て来た。
海辺や山間部にペンションや民宿の存在があるが、都内で自宅の一部を外国人観光客向けに提供しているケースもあり、住宅の持ち主が外国語の勉強のために低料金で歓迎しているニュースもあった。
温泉地の旅館やホテルでは「立ち寄り湯」ということを行っているところが増えたが、中には宿泊者以外には提供しないと頑なに固辞しているところもあり、久仁子の旅館もそんな姿勢を貫いている。
提供している宿泊施設ではタオル付きで1000円から2000円程度を徴収しているみたいだが、中には時間貸しを定めて客室での休憩や食事を提供しているところもあり、当日の宿泊されるお客様のチェックインに影響が及ぶケースもあると聞いている。
自分の旅館を選んでくださったお客様に「おもてなし」を徹底したいと考える久仁子は、だからこそ「立ち寄り湯」を受けていないのだが、温泉街にあるマンションにも空室が多いそうなので気に掛かることもあった。
家主がネットの紹介サイトに登録すれば世界中の人が目にすることが出来る。温泉文化や情緒が知られることは嬉しいことだが、そんなマンションを利用する外国人がやって来たらどうなるのだろうか。
数年後にラグビーのワールドカップや、オリンピック、パラリンピックの開催がある。久仁子の旅館ではパラリンピックの参加者対応に取り組む予定で、様々な企画を進めている。そんな中の一つがバリアフリーの客室設備を充実させることだった。
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