1日3組限定で夕食を鉄板焼きコーナーでと始めたのは今年の初めだったが、口コミから広がって最近は予約がいっぱい。「申し訳ございません。来月後半まで」とお断りすることが多く、ちょっと残念な思いもあり、鉄板焼きの夕食タイムを2部制にするかと対応を考えたこともあるが、やはり無理があり、鉄板焼きコーナを広げる工事をするしかないと行く結論になった。
この企画を始めるきっかけとなったのは。夫である社長の友人が酪農家をしているからで特別な飼料を食べさせて育てた特級品の牛肉が入手可能となったからで、乗り気でなかった女将の松美も食べてみて衝撃を受け、一日でも早くお客様にお出ししたいと数日後か工事を始めたので誰もが驚いていた。
鉄板焼きのコーナーで調理を担当するのは副料理長で、特に工夫を凝らしたのは肉を食べるときに付けるタレで、ニンニクのエキスの入った醤油、アーモンドが中心になったゴマダレ、岩塩、ワサビ、カラシなどだが、工事中に料理長と何度もテストを繰り返して完成させたものだった。
鉄板の厚さも一般的なものより1センチ厚い物を注文、ニンニクは地元の農家厳選して貰った物を使用。それをオイルとバターでこんがりと焼き上げ、絞ったエキスを焼いている途中で肉に掛けるのだが、ヘレ肉とロース肉との微妙なバランスが隠し味のようになっており、お客様の好みの「焼き具合」を確認してその量とタイミングを変えているそうだ。
肉は180グラムなので結構ボリュームがあり、肉好きなお客様から大好評を博しており、もう一度食べたいからとリピーターで来られている人も少なくないので驚いている。
添える野菜も前述の農家が厳選してくれている。ジャガイモ、玉ねぎ、モヤシ、なすび、レンコン、ほうれん草なども新鮮さが歓迎されて喜ばれている。
野菜は好き嫌いがあるのでメニューを決められる際に確認しているが、別注品として提供している「エビ」「ホタテ」「サーモンの切り身」などの注文も多く、添えられる野菜サラダも人気で喜んでいるが、何より嬉しいことは担当することになった副料理長が生き生きと仕事に取り組んでいることで、お客様との会話も中々のもので、社長が「水を得た魚だな」と言っていた。
旅館のHPのトップページにリンクボタンを設けているが、「人気が高くて中々予約が取れませんが」と添え書きしてあることに効果があるみたいで、そのステーキコナーでの夕食プランからいっぱいになってしまっている。
旅館は日本料理で「懐石」や「会席」料理だとの思い込みも多いが、最近は創作料理でフレンチ、イタリア、地中海などのコース料理を提供している旅館も登場しているが、最も重視しなければならないことは食材の厳選となるだろう。
昔から、鉄板を担当するスタッフが様々なショー的なパフォーマンスをしていたこともあり、今でも続けている店舗があるが、松美の旅館では正統派という姿勢で、仕上げに食用アルコールを使った炎を上げることだけは周囲に出来上がったことを知らせる意味も含めて行っている。
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