旅館組合から電話があり、午後一番に組合の会議室で緊急会議が開催されることになった。十数軒ある温泉街のホテルや旅館の駐車場には問題なかったが、組合が管理している広い共同駐車場で車上荒らしの被害が発生したそうで、車内に置いていた荷物がなくなっていたりナビが取り外されるという盗難事件も起きているとのこと。
光世の旅館の駐車場には防犯カメラが設置されており、駐車場の入り口にも防犯カメラの存在が表記されているが、大手の警備会社と契約しているだけではなく、損害保険会社とも契約をしてお客様の車に問題が生じた際の保障を考えていた。
光世の旅館のHPには「大手警備会社と契約してお客様の安全を第一に考えております」と表記しているが、損害保険会社と契約していることは触れておらず、それは悪用する目的を防止するためで、何でもありの世の中に憂いを感じるこの頃である。
被害が発生した組合の共同駐車場には防犯カメラが設置されているが、それは市販されている「ダミー」のもので、犯行に及ぶ人達から見抜かれていたと地元の警察官が指摘していた。
損害をフォローする保険も契約していなかったことからお客様の被害をどのように対処するかも話し合われたが、判明した物的被害については組合側が負担することになり、急いで警備会社と損害保険会社と契約を結び、高性能の防犯カメラを設置することに決まった。
防犯カメラはその文字が意味するように、犯行を抑制させる効果も大きいのだが、犯行を計画しているプロ達には電源につながるコードを切断してしまうケースもあり、こんなところに「イタチごっこ」みたいな問題が秘められていた。
一般的な駐車場やコインパーキングには「施設内で発生した事故について当方は責任を負いません」と表記されているが、ドアを開ける場合に接触して傷が付いたり、バックした時にぶつけて知らせないケースも起きており、何かあれば被害者側が管理者側にクレームを訴えるのも避けられない問題で、これらのことに関しても保険と防犯カメラの記録は重要で、参加者全員の賛成で実行されることになった。
この問題は3年前の会議で討議されたが、前組合長が費用を抑える意見で「ダミー」を押し切った経緯もあり、今回はそれを後悔する意見も多かった。
出席者の中には自分のホテルや旅館で「ダミー」を設置しているところもあったが、これを機にすぐに変更すると言っていたので温泉街の防犯体制がアップすることは大いに歓迎すべきことである。
地元の警察署の防犯担当者も出席していた。全国各地で「車上荒らしが」が多発しているそうで、その旨を表記した看板を設置して啓蒙することや、チェックイン時にお客様に確認することをやって欲しいと提案していた。
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