名古屋から在来線の特急列車で1時間半ほど離れた山間部にある温泉に志都子が女将をしている旅館があった。
阪神間に居住し、神戸市内にある大学に通って卒業後、世話好きな親戚の叔母さんの持ち込んだ見合い話から現在の旅館に嫁ぐことになった歴史があるが、もう20年の月日が流れ、先代女将が引退することになり、昨年に若女将から女将を後継することになった。
そんな志都子が久し振りに関西へ出掛けた。大学時代の同窓会が有馬温泉で行われることになり出席したものだが、関東に嫁いでいた人もおり、有馬からの帰路は大阪の新阪急ホテルの所まで運航されている路線バスを利用し、数人で大阪のお好み焼きで昼食ということになった。
そこでびっくりすることが目の前で行われ、全員がその店では食べる気がしないとなって別の店へ行くことになった。
「経営者か店長に伝えるべきよ」という意見もあったが、大阪市内に詳しい人物の意見ではかなり知られた店なので信じられず、後日にメールで送信すると言って落ち着いた。
一体何を目撃したのだろうか。それはアルバイトらしい女性スタッフの行動だった。志都子達が入店した時に4人連れのお客さん達が席を立った時だった。
志都子達がそこしか席が空いていないので女性スタッフが片付けを始めたのだが、彼女は鉄板の回りの木の部分をフキンで拭いたと思っていたら、そのフキンで鉄板の上まで拭き始めたので驚いたのである。
こんな行為はあり得ないこと、アルバイト店員だからと想像されたが、日常の家庭生活環境がそのまま出ることも多いようで、こんな信じられない飲食店があるとは驚きだった。
基本的にフキンは別の物を用意するべきであり、この事実をメールで送ったらさぞかし衝撃を受けるだろうと想像した志都子だが、日頃のサービスの中でマンネリ化して自分の旅館で横着な行為が行われていないかを戻ってから確かめたくなった。
そして次の店に入った志都子達だったが、そこで融通の利かないスタッフに出遭って一人が気分を害することになった。
彼女は豚肉や牛肉が苦手でイカのみの焼きそばをオーダーしたのだが、「豚肉も牛肉もイカも入っております」と返され、「料金はそのままでいいからイカだけでお願い」と言ったのに、出来上がって来た物には両方が入っており、どうやら厨房スタッフ間の連絡ミスだったようだった。
苦手な物は食べられないというのも理解出来るし、周囲に証人となる仲間も存在するのでやり直すことになったが、ここでまた次の問題が発覚したので大変だった。
厨房スタッフが横着なことで対処したみたいで、スタッフが持ち帰った焼きそばから豚肉と牛肉を取り出して持参してきたみたいで、ソバの内部から豚肉の欠片が出て来たことからこれはないだろうと発展。店長が申し訳ございませんと謝罪する出来事となった。
志都子は半年ほど前に都内で行われた旅行会社主催のセミナーに出席したが、その時のテーマはイスラム教徒の食事に関する難しい問題で、鍋、フライパンから食器まで、1回でも禁止された物で使用したら大変なことになるというもので、厨房のスタッフ達にその話をしたい思いに駆られた志都子だった。
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