このホテルを2泊利用して恥ずかしい体験を2回することになった。こんなことは想像もしなかったことで、今でも不思議でそれこそミステリーというレベルの出来事で、朝食、夕食を同じレストランで食事をしたのに自分の部屋に行くのがややこしくなって迷ってしまい、2回もホテルスタッフに案内して貰うことになったからである。
それは夫婦2人もいるのにこんな結果になったのだからミステリーなのである。何か狐につままれたという感じだったが、今度行ったらどうなるかと思っても自信がない。
そんなこともあってあまり部屋から出ることをせず、テレビを観たりネットを開けて観光情報を確認する時間を過ごすことになった。バスやシャワーは夕方と就寝前の2回利用していた。
次の日の予定は朝食を済ませてからタクシーでキャンベラ駅に行き、シドニーまで列車で移動するものだったが、観光資料を確認しながら距離や所要時間を調べていたのであまり不安はなかった。
このホテルを出発する朝、荷物を整理してから朝食のレストランへ行ったが、今日は間違いなく戻れるようにとルートを確認しながら行ったが、また不思議なことに分からなくなってホテルスタッフに助けを求めたので呆れられたかもしれない。
チェックアウトを済ませて玄関からタクシーに乗ろうとすると、昨日の夕食のレストランで会った日本人の女性スタッフがやって来て、「昨日は申し訳ございませんでした。これをお持ちください。列車を利用されてシドニーへ向かわれるそうですが、車内でも」と言って紙袋を手渡されたが、中にはペットボトルの水が2本とクッキーのパッケージが入っていた。
キャンベラ駅までタクシーなので15分ぐらいで到着した。遅れたら大変なので発車時間の1時間前に到着する予定で来たが、駐車場にも駅の構内にも人の姿が見えず、その閑散とした状態に「これが首都の駅?」と疑問を感じた。
構内の待合室に入っても日本の「みどりの窓口」のような施設があっても人の姿がない。壁に貼られてあった時刻表を見ると、この駅から発車する列車は1日に2本しかない。改札もないので写真でも撮るかと思ってホームに出ても列車の姿は何処にも見られない。ただ線路があるので鉄道の駅であることは確かだった。
そんな駅に人の姿を見るようになったのは発車時間の20分前の頃。発券の窓口にスタッフが座り、廊下の突き当りにある低いカウンターにオバサン風の人物が制服姿で我々を招いている。行ってみると列車を利用する乗客は座席への大きな荷物を持ち込めない規定があるそうで、飛行機のように預けるシステムとなっており、「Eチケット」のプリントを見せて荷物を預け、引換券を貰った。
列車がホームに到着したのは発車の15分前。乗客達が降りると扉を閉めて車内の清掃やシートの方向転換をするのは我が国と同じだが、列車は3両連結でA号車がファーストクラス、その他の2両はB・C号車でエコノミークラスとなっていたが、随分と古いような感じだった。
架線の設備がないところから電車ではなくディーゼル車両になっていたが、あまり利用する乗客の人数は多くなかった。
やがて扉が開いて乗客達が乗車を始めたので我々も車内に入って指定席に座ったが、車内の半分に売店コーナーがあり、発車の少し前にカウンター上のシャッターが開けられて女性スタッフが開業準備を始めた。
やがてその彼女が乗客達の間を回って注文を聞いているようで、それは昼食の対応だった。
残念ながら座席に置かれていたメニューの中には夫の食べられそうな物はなく、サンドイッチの野菜以外を取り除いて食べていたが、ホテルスタッフから貰ったクッキーを重宝していた。 続く
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