支配人の運転する車に同乗して観光組合の会議室で行われる会合に出席した。
毎月第三水曜日に会合が行われているが、何か緊急に決めなければならないことが起きたようで、今日の午前中に招集の電話があったのでちょっと気掛かりを感じる女将の日向子だった。
会議が始まった。冒頭に事務局長の挨拶があったが、組合長は緊急に集会を連絡した詫びの言葉に続いて本題に入った。
「実は、昨晩、我が組合員の旅館で行われていた宴会からの帰路で、代行運転を依頼した会社の運転者が事故を起こし、幸い軽い事故だったのでよかったが、今後のことを考慮すると組合員が一丸となって事故に対する対処と共に、損害保険に関して組合負担で契約するべきと提案したいのです」
日向子の旅館がある温泉地は18軒のホテルや旅館があるが、隣り町の組織団体の会合で宴会を受けることも多く、必然的に代行運転を紹介しなければならないケースもあり、この話を耳にした時には背筋がゾッとして、自分の旅館のお客様でなかってよかったと思った。
こんなケースで大きな事故が発生し、賠償という問題になると紹介した側の責任も考えなければならない。被害者側からすれば加害者側の存在が大きい方を対象にされて来る可能性が高く、規模の小さな代行運転の会社なら不安が生じるとい問題もある訳だ。
会社の規模を我々が出資して大きくさせることは不可能で、損害保険会社との契約をいう発想が選択されることになり、組合長をはじめとする役員達で臨時の緊急会議ですぐに対処したいという会合だった。
参加者全員が賛同する結果となってすぐに終わったが、帰路の車中で「これまで事故がなかってよかったね」と2人で会話を交わすことになり、戻ってから全スタッフに安全運転を心掛けるように伝え、会合で決まった代行運転の経緯についても説明したが、スタッフ達は「そんなことを全く考えていなかった」というような表情で聞いていた。
「紹介を」と依頼されて「紹介します」で対応した場合、旅館側から直接代行運転の会社に電話を入れるケースもあるし、電話番号をお客様にお渡しして直接電話をしていただくケースもあるが、この問題についてもしっかりとしたマニュアルを組み上げておかなければならないようだった。
「まさかそんなことが」ということが起きるのが世の中。その時に後悔しても始まらない鵜。いつも最悪の想定をして考えておくと事故やミスにつながることも軽減出来る可能性が高まるような気がする。
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