今日は嬉しい手紙が届いた。今年の8月30日にご利用くださったお客様だが、夕食の始まる前に浴衣から服に着替えられた奥様が「この辺りにコンビニはありませんか?」とフロントへ来られ、事情を伺うとご主人が食事の最後に必ず永谷園のお茶漬け海苔必要だそうで、今回の旅行も用意をされていたのに持参されるのを忘れられ、ご主人から「買って来い」と命じられていた出来事だった。
その際、女将の哲子は社長である夫も大好物で、建物に隣接する自宅に買い置きがあるところから取りに行き、二袋を差し上げたら大層喜ばれ、先月の末に「その時のお礼です」と珍しい地元のフルーツを宅配で恵贈くださって恐縮し、そのお返しにと三重県では誰もが知っている「田舎あられ」を取り寄せ、それを送ったことに対する礼状だった。
「田舎あられ」はお茶漬け好きの夫の大好物で、お茶漬けの際に永谷園の海苔茶漬けと一緒に入れたり、時折に食べている日清の「きつねどん兵衛」に入れたりしていることも書いておいたら、「病みつきになり、私もはまっています」と書き添えられていて思わず苦笑した哲子だった。
正直に吐露すると、哲子もテレビを観ながら寛ぐ時に熱いお茶に「田舎あられ」と少しの食塩を入れて楽しんでおり、旅館のスタッフの間でもそんな食べ方が広まっており、スタッフ休憩室の中にも「田舎あられ」が常に数袋置かれている。
「田舎あられ」との出会いは女将会のバス旅行で伊勢神宮に参拝した際の帰路、立ち寄った「道の駅」の店頭の並んでいた物を同行していた女将仲間が目に留め「これ、県民ショーの番組で観たことある。買って帰ろう」と言ったことから興味を抱いて購入したのが始まりで、その後はネットで直接メール注文をして送って貰っている。
伊勢からご夫婦が来られたことがあるが、その時に「田舎あられ」の作り方を詳しく教えていただいたし、煎る他にそのまま油で揚げる食べ方もあることを初めて知った。
テレビ番組の影響は想像以上だそうだ。知られる芸能人が何かの番組で「あれ美味しい」と言っただけでどの店も売り切れになった出来事もあったし、全く人気がなく販売商品の中から外そうと進めていたら芸能人の発言から品切れになってしまい、生産工場のラインを変更して対応したというケースもあった。
ホテルや旅館の世界でもそうだが、旅番組の中で紹介されたらその日に一気にHPのアクセス数が増えると言われているが、哲子の旅館が紹介された際、1日で前年の1年分のアクセス数を記録して驚いたこともある。
一度テレビの番組で紹介されると番組制作会社やテレビ局から取材の電話が多くなるが、中には取材という言葉で信用させて偽の企画で騙そうというのもあるそうで気を付けている。
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