九州で行われた大規模な合同葬の担当を終え、中国自動車道を大阪へ向かって走行中だった。もう午後7時を過ぎて真っ暗な中、ヘッドライトが照らす部分だけが見える。
山口ジャンクションから山陽道と中国道に別れてどちらでも選択が出来るが、カーブは多いが交通量の随分と少ない中国道を走行するのが彼の常。それは、アクセルを踏まなくても走行が出来るオート運転が通行量の少ない中国道の方が向いていたからで、居眠り運転さえしなければオート走行は随分と助かる。
給油をするために立ち寄ったサービスエリアで序に蕎麦でもとレストランに入ろうとした時に携帯電話が鳴った。それは会社からのもので、友人のお母さんが亡くなられて葬儀の依頼があったという報告だった。
葬儀を行うのは自宅だそうだが、会社から車で1時間以上離れたところだし、かなり大きな旧家なので会葬者が多いと大変だと考えてアドバイスをしておいた。
深夜に帰阪、そのまま自宅に戻って次の日に打ち合わせの内容を確認したが、それによるとかなり通知する範囲を狭めるそうで、200人ぐらいなら何とかなりそうだと読んでいた。
お通夜はその通りになったが、葬儀当日は誰かが知らせるべきではなかった関係方面に訃報を伝え、それだけで500人以上の参列者が来られることになって大変なことになった。
廊下が随分と長く何度か回り込んで祭壇の部屋に行くところから、土足設備で対応して庭に抜けていただく一方通行しか時間的な問題から無理だったが、この葬儀にはもう一つどうにもならない条件があった。
導師を務められるお寺さんは故人の故郷から来られており、随分と式次第が異なるところから打ち合わせ時に無理なお願いをすることになった。
時間の制約がない地方と大都会とは全く異なり、火葬場に定められた時間内に到着しなければならない事情もあったが、この問題がご理解されないところから難しく、会葬者が多いので15分前から開式させてくださいということでお願いした。
閑静な住宅地の突き当りとなっていたので通行する車がなかったので落ち着いて進めることは出来たが、玄関横に設置した司会台には秘密兵器みたいな優れものがあった。それは25年も前に導入していたとは想像出来ない代物で、祭壇のある部屋にセッティングしたビデオカメラの映像が映し出されるものだが、そのカメラは司会台に置かれているリモコンで方向やズームが変化可能というものだった。
それでお寺様の動きが確認出来たし、アナウンスのタイミングも可能となった訳である。
玄関から入られる参列者がその映像を目にされながら、「こんなの初めて見た」と驚かれていたことが印象に残っているが、アナログ人間でも最先端のハイテク技術を理解する努力はしていた。
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