全てのお客様のチェックアウトが終わり、最後のお客様のタクシーを玄関でお見送りしてから智佳子が事務所に戻ると、「女将さん、これ、面白いですね」と副支配人が旅の情報誌を手に、開いていたページを見せてくれた。
それはJRの「おとなび」の最新号だったが、「リメンバー九州キャンペーン 新しい、ふたたびの風景へ」という特別企画みたいだが、旅館の宿泊プランの企画を担当している副支配人が何かを感じたようだった。
「リメンバー九州パスポート」の企画には様々な特典が表記されていた。「九州スイーツお試し券」「施設での特典・割引」「クロスワードパズル」「スタンプラリーで商品が当たる」「記念日新聞」「思い出の旅アドバイザー」「思い出の写真を見せると特典」「地元ならではの料理を提供」「くまもとくるり食べ歩きクーポン」「天文館クーポンBOOK」などが提案され、「食べて、巡って、浸って、たくさん体験して、すてきな時間を九州で見つけてください」という文章で結ばれていた。
「記念日新聞」は指定した日の新聞のコピーが貰えるみたいだし、「思い出の写真を見せる」というのは新婚旅行の時に撮影した写真のことのようである。
スタンプラリーは「山陽新幹線全線開業40周年記念」となっており、「九州5県制覇賞」や「各県制覇賞」があった。
ページに掲載されている観光写真は「佐賀県 有田雛のやきものまつり」「長崎県 平戸ひらめまつり」「熊本県 粟島神社」「大分県 関あじ関さば」「鹿児島県 知覧の茶畑」の5枚があったが、それを見ながら過去に行った佐賀県の呼子の透明な「イカ」を食べたことを思い出した智佳子だった。
東日本大震災からもうすぐ5年を迎えるが、九州新幹線が山陽新幹線と相互直通運転をされてからも5年目となる。そんなところから1年間のキャンペーンも実施されるようだが、記念駅弁や記念商品の車内販売も企画されているし、駅構内での様々なイベントやJR系列ホテルを会場とする「食フェア」も案内されていた。
先週末に京都から来られた高齢のご夫妻がおられたが、夕食時にお部屋へ参上した際に「孫を連れて行くイベントがあってね」と語っておられたことを思い出した。万博記念公園で毎年開催されている「万博鉄道まつり」が今年も3月19日と20日に行われるそうで、人気があって10万人も来場するというのだから驚きだが、京都市内にも鉄道博物館がオープンする予定もあり、全国の鉄道ファンの話題となっている。
智佳子の夫も鉄道ファンの一人だが、最近は「女子鉄」と呼ばれる若い女性も増えたそうで、「乗り鉄」「撮り鉄「録り鉄」「葬鉄」という文字を新聞で目にすることも多くなった。
この情報誌にある企画は智佳子の旅館でプランを考える参考になることが多く、それを副支配人が紹介した目的だったが、また新しいプランを企画してくれるだろうと期待していた。
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