華凛が女将をしている旅館がリニューアル工事をしたのは6年前だった。旅館の一人娘として生まれた華凛は宿命として後継したが、結婚した相手が長男だったので養子として姓を変更するのに夫の両親に猛反対をされた。
一男二女と可愛い子供達が誕生し、夫の両親も孫の顔を見たさに月に1回はやって来るが、いつも無理やり宿泊して貰うようにしており、その時は子供達を同室させることにしている。
リニューアルを決断した出来事があり、それは華凛夫妻の忘れられない思い出の教訓となっている。
築年数が古かったことから客室の防音対策に問題があり、市街地から来られていた男性5人達が麻雀をされたことから隣室に迷惑が掛かり、立腹されたお客様が「賭け麻雀をやっている」と110番通報されたことから深夜にサイレンを鳴らしたパトカーが玄関にやって来たことから大騒動に。
事情聴取をされて賭け麻雀については不問となったが、次の日の朝食時のレストランでは不穏な空気で、華凛夫妻が大変な思いで両者を接遇することになった。
それを機に隣室との防音対策に巨費を投じることになったが、お蔭でそれからそんなクレーム問題も起きていない。
囲碁、将棋、麻雀は有料で貸し出す対応をしているが、一時はブームとなったオセロゲームも無料で貸し出していた。
前述の男性客は「5人打ち」という方式でゲームを進めていたそうで、麻雀に詳しい料理長の解説によると一順して交代して行くルールで、抜けている時に大浴場に行くことが多いそうで、その時も深夜に入浴されていた報告もあった。
この温泉地のホテルや旅館の中にも「麻雀専用ルーム」を設けて午後11時までと限定しているところもあるが、車で来られるお客様の中にはテーブルや牌をご自分達で運び込まれるケースもあり、騒音に対するクレームには神経を遣うが、意外な事実に壁よりも廊下を経る扉から流れ聞こえる騒音が高いそうである。
そんな事実を知ったのはリニューアル時に工事を担当してくれた建設会社の人物で、扉の厚さも重視するようにアドバイスをされていた。
麻雀、囲碁、将棋などは没頭すると時間の経過が消えてしまうようで、いつの間にか日付が変わっていても、止めようと言い出し難い環境があるようで、外が明るくなったというケースも聞いたが、わざわざ温泉地の旅館に来てなぜ長時間のゲームに没頭出来るか不思議に思っている華凛だった。
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