前号で4月29日午後3時9分に発生した由布院での地震について、「震度5弱」と書いていたが「震度5強」だったことをお詫びして訂正いたします・・・・筆者
半月前に予約電話があったお客様だが、今日の午後4時頃にチェックインをされた。予約の電話で「そうこうかい」という言葉に担当者が何方かの「壮行会」と思ったらそうではなく、「走行会」だったのでびっくりすることになった。
10名様のご利用で2部屋をご希望。お二人連れでご利用されるケースより低価格となるのは常識だが、美怜(美怜)が女将をしている旅館では提供している料理のグレードアップという特典もあり、今回のお客様がネットの公式HPから選択されるきっかけとなったのもそれが理由となっていた。
さて、走行会のことだが、全員が還暦を迎えてから若い時代に憧れていたハーレーダビッドソンで一緒に走行するというもので、単なる暴走族とは異質のもので、それぞれが定年退職や人生の余暇の一部として楽しんでおられ、到着された際の爆音の迫力は想像以上のもので、その時にチェックイン中のお客様が驚かれて玄関まで観に行かれたこともあった。
通称「ハーレー」と呼ばれるアメリカ製の大型バイクは個性的なデザインで独特のエンジン音を響かせることが知られており、アメリカ映画の中で「白バイ」としても登場するところから人気が高い。
副支配人もハーレーに憧れていた一人だが、彼がびっくりする秘話があることを教えてくれた。それはあの東北大震災の時に津波で宮城県から流されたコンテナが6500キロも離れたカナダの島に流れ付き、中からハーレーのオートバイが発見され、ハーレーダビッドソン社が無償で修理をして持ち主を探して返還する予定だったが、判明した持ち主はそのまま記念館に展示するようにされたというものだった。
美怜には心配することがあった。それは社長をしている夫が還暦を迎えたら「ハーレーに乗る夢がある」と言っていたことを思い出したからで、来年に還暦を迎える夫のハートに火を点けないかということだった。
その心配は的中した。副支配人と2人で盛り上がったそうで、1年前倒しで購入しようか「貸してやるから楽しもう」なんて言っているそうで、玄関横に並んだハーレーを懐中電灯で照らして1台1台を確認していたことを知った。
美怜には夫の夢を実現させたくないという思いはなかったが、何より心配なのは交通事故で、屈強なタイプではない夫があんな大型バイクを操ることが出来るのだろうかということだった。
夫から「なあ」とその話題が出て来たのは、「走行会」の皆さんがチェックアウトされた後ろ姿を見送ったすぐ後だった。
「恰好いいなあ。恰好いいだろう。欲しいな。乗りたいなあ」という子供みたいな言葉に付き合うことになった。
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