日本へ一年振りの「お里帰り」をして来ました。
いつも思う事は 日本は世界一物質的に恵まれた豊かな国だということ。
ローマに戻って来て、まだ豊かな日本の感覚が抜け切れないでいた・ある日の出来事ーー。
市場からの帰り道、近所の教会の前に、アフリカ系の五歳くらいの男の子が
グッタリと座り込んでいた。どう見てもお腹を空かしているに違いない。
そう思って私は 今買って来たばかりのオリーブのパンを籠の中から取り出した。そしてそのパンを、少し千切って、男の子に手渡してみた。
するとどうだろう、男の子は 一瞬、瞳を輝かせた。
でも、その子はそのパンを食べようとしないのである。
不思議に思っていたら、男の子は教会の中に目を向け、立ち上がった。
そして、教会の中から、更に小さい二人の子供たちを連れ出して来たのである。どうやら弟たちらしい。
男の子は その二人を自分の横に座らせて、先ほどのパンを小さく千切り、二人に手渡した。その子たちが食べる姿を見てから、最後に、残ったパンを自分の口に運んだ。
そのパンは イタリア人の夫の好物で、何時も手に入るパンではなかった。
しかし、私は まだ袋の中に残っている方のパンも、その子に手渡した。
初めて、その子は 笑顔で私の目を見て、「メルシィ ! 」とか細い声で言った。アフリカの旧フランス領国から来たらしい。
どうやって、ここまでやって来たのだろうと思うと胸が熱くなった。
五・六歳にして、兄弟を思いやる事ができて、他人への感謝の仕方まで知っている。
生まれた国は貧しくとも、確りとした「人間教育」を受けた子であることに感銘を覚えた。
今の日本の五歳の子が 果たして、同じ環境に遭遇したとして「ありがとうございました」と言えるだろうか ?
恵まれ放題の環境の中で、与えられる一方で育ち、自分から人に感謝をするということなどないに違いない。
例え、兄弟がいても、空腹なら自分が先に貰ったパンを食べてしまうのが子供というものではないだろうか。
私は 三人の小さな子供たちのザラザラとした頭をいっぱいの優しさを込めて
撫ぜた。そして、後ろは振り向かないで、その場を離れた。
バチカンのクウポラが遠くに見えた。
あの子達の成長を心から祈らずにはいられなかった。
世界の国々間の経済格差が、あまりにも広がり過ぎてしまった今日。
恵まれた日本で育った私は 今、改めて、この格差を心苦しく思うのである。
何事も経済だけを優先させて進んで来たこの時代。
しかし、人間として最も大切な「人間性」が取り残されてしまっていた。
その結果が、今現在の世界事情と言えるのではないでしょうか。
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